コラム

張競「2017この3冊」毎日新聞|『中原中也』佐々木幹郎『小説の仕組み』菅原克也『中国政治からみた日中関係』国分良成

  • 2018/01/03

2017 この3冊

〈1〉『中原中也』佐々木幹郎(岩波書店・972円)

〈2〉『小説の仕組み』菅原克也著(東京大学出版会・3888円)

〈3〉『中国政治からみた日中関係』国分良成著(岩波書店・2592円)


〈1〉中原中也研究の第一人者で、詩人の佐々木幹郎は、ここ三十年近くのあいだに発見された資料をもとに新たな詩人像の構築を試みた。草稿、初出、詩集や校正などの段階における表現の変化を検証することで、一篇の詩が成立するまでどのように揺らぎ続けていたかを、創作ノートや日記、書簡と突き合わせて実証した。

〈2〉佐々木幹郎の詩の生成論に対し、菅原克也は小説がどのように出来上がるかに注目した。物語を内容、言説と行為の三つの「相」に分けて、近代文学の名作がどのように紡ぎだされたかを読み解いた。

〈3〉国分良成は現在の日中関係がなぜこのようになったかについて、中国の国内政治という視点から分析し、中国の対日関係はつねに国内政治の季節風に晒(さら)されていること、最高指導者の個人的意志が外交に影を落とすことを明らかにした。

中原中也――沈黙の音楽 / 佐々木 幹郎
中原中也――沈黙の音楽
  • 著者:佐々木 幹郎
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:新書(304ページ)
  • 発売日:2017-08-31
  • ISBN-10:4004316731
  • ISBN-13:978-4004316732
内容紹介:
詩人であることの幸福と不幸。近代日本を代表する詩人の、自らへの自負と揶揄、表現者としての存在の不安がみなぎる作品の数々は、どこからきたのか。宿命のように降りてきたのは、雪か、歌か。その歌はどこへ消えていくのか。新発見資料から読み解く、立体的な、まったく新しい中原中也像の誕生。

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小説のしくみ: 近代文学の「語り」と物語分析 / 菅原 克也
小説のしくみ: 近代文学の「語り」と物語分析
  • 著者:菅原 克也
  • 出版社:東京大学出版会
  • 装丁:単行本(432ページ)
  • 発売日:2017-04-29
  • ISBN-10:4130830708
  • ISBN-13:978-4130830706
内容紹介:
現代の文学理論、とくに小説という形式における物語論を解説し、日本の小説をより深く楽しむヒントを読み解く。

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中国政治からみた日中関係  / 国分 良成
中国政治からみた日中関係
  • 著者:国分 良成
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(288ページ)
  • 発売日:2017-04-19
  • ISBN-10:4000292013
  • ISBN-13:978-4000292016
内容紹介:
なぜ日中関係は悪化と改善の変動が激しいのだろうか。なぜ歴史問題をめぐる対日批判は収束と再燃を繰り返すのだろうか。その要因は中国国内の権力ゲームの帰趨にある。日中国交正常化から現在まで、中国政治体制は対日政策とどのように密接に関連しているのか、さまざまな事案と資料に基づいて明らかにする

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2017年12月17日

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