コラム
辻原 登「2018 この3冊」|三浦雅士『孤独の発明 または言語の政治学』(講談社)、朝井まかて『悪玉伝』(角川書店)、倉数茂『名もなき王国』(ポプラ社)
2018 この3冊
(1)『孤独の発明 または言語の政治学』三浦雅士著(講談社)
(2)『悪玉伝』朝井まかて著(角川書店)
(3)『名もなき王国』倉数茂著(ポプラ社)
(1)『孤独の発明 または言語の政治学』は、言語の考察で、これほど遠くまで、しかもいささかの晦渋(かいじゅう)さもなく連れ出してくれる本は稀(ま)れである。刺激度は、ジュリアン・ジェインズの『神々の沈黙』やアーサー・O・ラブジョイの『存在の大いなる連鎖』を読んで以来だ。
とりわけ第六章「光のスイッチ」では目が啓(ひら)き、世界を初めて見る思いがした。
(2)『悪玉伝』は、進境著しい朝井まかて。銀(本位制)の大坂と金(本位制)の江戸との闘い。悪党でなく、悪玉と呼ばれる男はどんな奴(やつ)か。興味を繋(つな)いで読み進むうち、作者得意の牢獄(ろうごく)描写。うならされた。ラストにやや物足りなさが残るが‥‥‥。
(3)『名もなき王国』は、新鋭の作品だが、深い思索とリリシズムがタペストリーの裏 地のように沈められた、エンタテーメントの秀作。
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