生命の起源と生化学
- 著者:オパーリン
- 出版社:岩波書店
- 装丁:単行本(216ページ)
- 発売日:1956-02-01
- ISBN-10:4004160820
- ISBN-13:978-4004160823
その他の書店
ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、
書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。
ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。
新聞書評に女の眼を
何ヵ月か前のこと、作家の津島佑子さんが『朝日』の書評委員になって、コラムにその辺の事情が書いてあった。女性の書評委員は十八年ぶりのことに津島さんも絶句、「せめてあと一人は」と要望されたとか。三大紙のあとの二紙も『毎日』は芸大の小島美(とみ)子さん一人、『読売』は高群逸枝研究などで知られる堀場清子さん一人といった調子で、あとは男性ばかりである。
そのせいか、とりあげられる本も、確かに話題作、名作にはちがいないが、家庭の主婦がとびつきたくなる本にはあまりお目にかかれない。家事、育児の本など、岩波新書の『母乳』といった権威あるもの以外、めったに登場しない。女は家庭欄のすみを見よといった感じ。この国では、とかく実用書をハウツウとかいって一段低く見る傾向があるようだ。でも、較べられるものではないけれど、画期的とはいえ、重箱の隅をほじくったような専門書より、人が生きていくのにどれほど役立つ実用書があるか知れない。
新聞の書評を読んでみると、これがまた、いかにもオトコが書いた、という文章。もちろんオンナも科学の先端分野や世界の大勢を知りたいのだが、はじめて聞くようなことを「周知の事実だが」「よく知られている」とやられると、それでもうおどかされて、本を読む気が失せてしまう。そして「得るところがあろう」「そうした問いを投げかけていると思われる」と書評文体とでもいった様式美。
近ごろ、書評って何だろう、としきりに考える。
学生のころ、何でも教養として身につけようと張り切っていたころは、こういう啓蒙的書評をありがたがっていた。でも、子供もいて時間の制約の多いいまとなっては、書評欄で本当に役に立つ一冊の本とめぐりあいたいと望むのは、ぜいたくなのだろうか。
本誌は、一読者の立場に立って、そういうお役に立ちたいと心がけているものである。
新聞にもそんな書評を書いてくれる、女性の評者の登場を待ちたい。でも、男のように考え、男のように行動するキャリア・ウーマンは願い下げ。お鍋の底のこげをこすったことのあるような人がいい。