コラム

鹿島 茂「2024年 この3冊」毎日新聞|小田光雄『近代出版史探索Ⅶ』(論創社)、ポール・モーランド『人口は未来を語る 「10の数字」で知る経済、少子化、環境問題』(NHK出版)、藤原貞朗『ルーヴル美術館 ブランディングの百年』(講談社)

  • 2025/01/18

2024年「この3冊」

<1>『近代出版史探索Ⅶ』小田光雄著(論創社)

<2>『人口は未来を語る 「10の数字」で知る経済、少子化、環境問題』ポール・モーランド著(NHK出版)

<3>『ルーヴル美術館 ブランディングの百年』藤原貞朗著(講談社)


<1>は著者・編集者・出版社・印刷所などの要因がどのように出版ネットワークを形成していったかを考察する「近代出版史探索」シリーズの第七巻。明治末年に完成した日本独自の出版流通形態の源流に迫ろうとした前代未聞の試みであったが、著者の急逝により頓挫。無念極まりないが、近々、遺稿である第八巻が世に出るとのこと。

<2>国会では少子高齢化や低賃金などが延々と議論されているが、国会議員は全員この本を読むべきである。答えは全部書いてあるからだ。

<3>はインバウンド戦略の一環として文化・芸術を位置付け、成功を収めたフランスのブランディング戦術の起源が一九三〇年代のルーヴル改装でサモトラケのニケが大きくフィーチャーされたことにあるのを突き止めた新鋭の意欲作。

近代出版史探索Ⅶ / 小田光雄
近代出版史探索Ⅶ
  • 著者:小田光雄
  • 出版社:論創社
  • 装丁:ハードカバー(660ページ)
  • 発売日:2024-01-30
  • ISBN-10:4846023494
  • ISBN-13:978-4846023492
内容紹介:
『女優ナナ』をめぐる翻訳状況、社会運動と文学の接点、そしてアナキストでありフェミニストであるエマ・ゴールドマンの受容史。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。


人口は未来を語る: 「10の数字」で知る経済、少子化、環境問題 / ポール・モーランド
人口は未来を語る: 「10の数字」で知る経済、少子化、環境問題
  • 著者:ポール・モーランド
  • 出版社:NHK出版
  • 装丁:単行本(384ページ)
  • 発売日:2024-01-26
  • ISBN-10:4140819537
  • ISBN-13:978-4140819531
内容紹介:
40億、121、79000――国家の命運は人口が握る! 気鋭の人口学者による大胆な未来予測

超大国になるか発展途上のままか、経済的に豊かになるか貧困にあえぐか

○少子化は政策より個人の思想が影響する
○高齢化が進むと紛争が減る
○超高齢化社会・日本は未来の象徴

今後の社会を読み解くうえで多くの示唆を与えるユニークな教養書。

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ルーヴル美術館 ブランディングの百年 / 藤原 貞朗
ルーヴル美術館 ブランディングの百年
  • 著者:藤原 貞朗
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(288ページ)
  • 発売日:2024-11-14
  • ISBN-10:4065375029
  • ISBN-13:978-4065375020
内容紹介:
◆人生に一度は《モナリザ》をルーヴルで見たい?!◆なぜ、数ある美術館のなかで、ルーブルだけが特別なのか。世界中の人が憧れ《モナリザ》や《サモトラケ島のニケ》《ミロのヴィーナス》をひ… もっと読む
◆人生に一度は《モナリザ》をルーヴルで見たい?!◆

なぜ、数ある美術館のなかで、ルーブルだけが特別なのか。
世界中の人が憧れ《モナリザ》や《サモトラケ島のニケ》《ミロのヴィーナス》をひと目見たいと願っている。

だが、かつては時代遅れのみっともない美術館として「ルーヴルは国の恥」「若者よ、ルーヴルに行くな」と言われたこともあった。
1793年、フランス大革命によって成立した第一共和制政府が王室コレクションを「略奪」して公開する場所として誕生したこの美術館は、その後、さまざまなコレクションを吸収して肥大化した挙げ句、近代化に乗り遅れた「カオスの迷宮」となり果てていたのである。
それが、いかにして世界中から憧れられる場所となったのか?

繰り返される国内紛争と政権交代に翻弄された苦難の時代を経て、現代アート、モードや漫画をも「古典」と成して飲み込み
文化国家フランスを荘厳する「偉大なるルーヴル」が生み出されるまでの百年を、戦略と欲望、政治と資本が渦巻く歴史として描き出す。

なぜ《ニケ像》だけが大階段の前に据えられているのか?
印象派が十年間だけ所蔵された顛末とは?
豊富な図版と多彩なエピソード満載、驚くべき発見と鋭い洞察に満ちた興奮の美術史!

【本書の内容】
序章 ルーヴル美術館の現在
第一章 ルーヴル美術館の歴史―─誕生から巨大化への長い道のり
第二章 コレクションと展示室の発展―─第三共和政前期(一八七〇―一九一四)
第三章 一九二〇年代、「迷宮」からの再出発
第四章 ルーヴル美術館の「ナショナリゼーション」―─近代化に隠された意味
第五章 ルーヴルの「顔」―─ブランド・イメージの創出と《サモトラケ島のニケ》の秘密
第六章 ルーヴル・マジック、もしくは古典の誘惑
第七章 幕間劇 空白の二十年(一九三九―五九年)と一九三〇年代の「忘却」
第八章 「世界一の美術館」の誕生―─《モナリザ》とともに
第九章 「ルーヴルへの回帰」―─グラン・ルーヴル計画
第十章 グローバル・ブランド「ルーヴル帝国」への「進化」
第十一章 「ルーヴル美術館展」の歴史―─学芸員による展覧会活動

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2024年12月14日

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