書評
「2025年 この3冊」毎日新聞|<1>押川 典昭『プラムディヤ・アナンタ・トゥールとその時代』上・下(めこん) <2>細川 瑠璃『フロレンスキイ論』(水声社) <3>村田 優樹『ウクライナの形成 革命期ロシアの民族と自治』(東京大学出版会)
2025年「この3冊」
<1>押川 典昭『プラムディヤ・アナンタ・トゥールとその時代』上・下(めこん)
<2>細川 瑠璃『フロレンスキイ論』(水声社)
<3>村田 優樹『ウクライナの形成 革命期ロシアの民族と自治』(東京大学出版会)
<1>二〇世紀インドネシアを代表する国民的作家の生涯を描いた大作。長年研究に打ち込んできた著者のライフワークである。現代史の壮大なパノラマであるとともに、人間像を生き生きと浮かび上がらせた感動的な伝記文学でもある。
<2>の主人公はスターリン時代の粛清に倒れた司祭。哲学・数学・宇宙論・美学・工学と何でもできた万能の天才だったが、その思想は極めて難解で時に奇抜。文理両面に通じた著者が見事に解明した。
<3>ウクライナ民族主義者とロシア自由主義者の相互関係を丹念に掘り起こし、両民族共存の道がいかに探られたかに焦点を当てた。敵対と憎しみばかりが強調される現代に啓示の光を投げかける。
<2><3>は三〇代の若手研究者のデビュー作。世代交代の爽やかな風だ。
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