一昔前から、教養教育が軽視されがちになり、代わって「リベラルアーツ」なる表現が目立ってきた。中部大学の主催するシンポジウムでは、ここ数年「21世紀のリベラルアーツ」「リベラルアーツと外国語」「リベラルアーツと自然科学」のテーマがとりあげられ、昨年初夏に「リベラルアーツと民主主義」が開催されて、ひとまず完結したらしい。
報告者3人は、まず政治思想史の宇野重規氏で「民主主義に教養は必要なのか」というズバリの問いから、特定の専門知識ではなく他者と粘り強く言葉を交わす資質を培うことだと指摘する。次に、現代思想・政治思想史の重田園江氏は「リベラルアーツはなぜ『価値を変える』ことができるのか」と問いかけながら、国家や政府を批判しても話を聞いてもらえるという点ではリベラルアーツの批判性を保証する民主主義がありうることを明らかにする。
最後に、哲学者の國分功一郎氏は「創出されるべきものとしての民主主義」と題して、古代のギリシアとローマの事例を用いながら、代表者ではなく自分で判断し行動する市民の自覚を促すのが民主主義の特質であることを論じる。