書評

『民主主義のつくり方』(筑摩書房)

  • 2019/05/26
民主主義のつくり方 / 宇野 重規
民主主義のつくり方
  • 著者:宇野 重規
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:単行本(218ページ)
  • 発売日:2013-10-15
  • ISBN:4480015833
内容紹介:
民主主義への不信が募る現代日本。より身近で使い勝手のよいものへと転換するには何が必要なのか。〈プラグマティズム〉型民主主義に可能性を見出す希望の書!

〈習慣〉から未来への展望探る

こんな柔らかい言葉で現代政治について論じる人は、日本の政治学者のなかではめずらしいのではないか。

以前、この人が〈身体〉という概念を用いて政治史を論じている文章にふれて、とても新鮮に感じたことがある。近代という時代に、社会を人体のように一つにまとめる「超越的な秩序」が不在となって、統合ではなく対立や分断を内に抱えていることがむしろ社会の構成要件になってゆくそのプロセスが、〈脱身体化〉としてとらえられていた。本書ではその視点が、民主主義の未来を展望するなかで、〈習慣〉という視点へと深められている。

現代は、社会を基礎づける「確実性の指標」が消滅した時代だという認識が出発点にある。だからこそ熟議が必要なのに、市民はいま、かつてないほど世間の動きに流されやすくなっている。そして他方には、政治への深い不信と無力感。そのなかで「あまりに狭くなった政治の回路」を再びどう切り拓(ひら)いてゆくかという問題意識である。

ここでプラグマティズムに着目するのは、「十分な判断材料がないにもかかわらず、何らかの選択をしなければならない」という状況下で、「実験による社会の漸進的改良」を説いたのがデューイらのその思想だからである。そしてアメリカン・デモクラシーの最良の部分は、この思想を習慣として内面化してきた地域コミュニティーでの自治の経験にあると著者は見る。

そしてそのあと、隠岐諸島や釜石など中央から遠く離れた地域でいま取り組まれつつある、先住者と新たな移住者との協働による起業やソーシャル・ビジネスなどに、一気に眼(め)を転じる。そこに新たな「民主主義の習慣」を見ようというのだ。

富の再配分ではなく、負担の再配分(痛みの分かち合い)をこそ語らねばならない「収縮時代」に送り届けられた、一冊の希望の書である。
民主主義のつくり方 / 宇野 重規
民主主義のつくり方
  • 著者:宇野 重規
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:単行本(218ページ)
  • 発売日:2013-10-15
  • ISBN:4480015833
内容紹介:
民主主義への不信が募る現代日本。より身近で使い勝手のよいものへと転換するには何が必要なのか。〈プラグマティズム〉型民主主義に可能性を見出す希望の書!

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2013年12月8日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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