書評
『主婦と演芸』(幻冬舎)
鋭い観察眼、心地良いコトバ
文章を書くのが好きという清水さん。コトバの上下動が心地いい。まるで空中ブランコの下に張られた大きなネットをゆらゆらと歩いているみたい。主役を張らない“モノマネ芸人”、そして二十数年やってきた主婦としての眼(め)は、さわやかで、確かで、鋭い。モノマネが仕事だから人を観察する眼は並でない。芸能人の楽屋裏やオフの話が多いが、私生活公開といった空気はつゆなく、仲間のヒトとしてのおかしさ、不思議さを、さりげなく描き、えらそぶらずにちくりと刺す。コトバは柔らかいが相当な辛口、でもイヤミがなく、言われてうれしいというような批評は、そうそうあるものじゃない。
贅沢三昧(ぜいたくざんまい)の旅行を楽しむ芸能人への感想――「生きる知恵ってなものを全然使わないから、ただただ快適なだけで、笑いあえるユーモアがぜんぜん生まれなくなります」。
“便利”や“快適”をひたすら追い求めてきた果ての社会のつまんなさを、思い知らされました。
朝日新聞 2013年6月23日
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