書評
『流れゆくままに』(青志社)
昨夏、昭和最後の大スターだった渡哲也さんが逝去したが、本書はさりげない自伝である(ALLREVIEWS事務局注:本書評執筆年は2021年)。「生まれつきのノンキモノでナマケモノ」というのが彼の口癖だったという。でも、数年前に弟の俳優・渡瀬恒彦さんが亡くなったことは周知だが、幼少期に、すでに兄と末弟が亡くなっていたということを知ると、胸が詰まる。根っから気どらず、謙虚でいたような人柄の裏に、ある種の悲痛な諦念があったのだろう。
一人の人間としては気楽にいたかったのに、俳優としては人知れず苦悩もあったのだろう。なにしろ、心酔していた石原裕次郎さんの死後、石原プロの社長という重職にもあったのだから、呑気な怠け者ではいられなかったにちがいない。
若いころ、裕次郎さんから忠告されたことが印象深いという。「俳優同士で酒飲むんなら、スタッフと飲むんだぞ」とも「俳優である前に一人の社会人でなくちゃだめだ」とも。人気が出たからと勘違いせずに、支えてくれるスタッフを大事にしろ、とはボスたる者の心得。そのボスから「勇気と生き方」を学んだという感慨は心に響く。華やかな沈着さがまぶしく、まさしく親方のようだった。
一人の人間としては気楽にいたかったのに、俳優としては人知れず苦悩もあったのだろう。なにしろ、心酔していた石原裕次郎さんの死後、石原プロの社長という重職にもあったのだから、呑気な怠け者ではいられなかったにちがいない。
若いころ、裕次郎さんから忠告されたことが印象深いという。「俳優同士で酒飲むんなら、スタッフと飲むんだぞ」とも「俳優である前に一人の社会人でなくちゃだめだ」とも。人気が出たからと勘違いせずに、支えてくれるスタッフを大事にしろ、とはボスたる者の心得。そのボスから「勇気と生き方」を学んだという感慨は心に響く。華やかな沈着さがまぶしく、まさしく親方のようだった。
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