書評

『流れゆくままに』(青志社)

  • 2025/05/27
流れゆくままに / 渡 哲也
流れゆくままに
  • 著者:渡 哲也
  • 出版社:青志社
  • 装丁:単行本(320ページ)
  • 発売日:2021-03-28
  • ISBN-10:4865901140
  • ISBN-13:978-4865901146
内容紹介:
五度の大病に打ち克つものの、七十八歳で逝去した昭和最後の映画スターが遺した凄烈で壮絶なる自伝。運は振り向いてくれたけど病魔には容赦なく襲われた。長く生きることよりも〝生き方〟を… もっと読む
五度の大病に打ち克つものの、七十八歳で逝去した昭和最後の映画スターが遺した凄烈で壮絶なる自伝。
運は振り向いてくれたけど病魔には容赦なく襲われた。
長く生きることよりも〝生き方〟を大切にしたい

秘蔵写真34点掲載

目次
第一章 石原プロ
人生
俳優
ありのままの結婚
日活との訣別
石原プロが倒産の危機
裕次郎の涙
撮影中に倒れる
わが子の命
父の死

第二章 青春の彷徨
淡路島岩屋
母、雅子
明治男の一徹さ
「道彦、死ぬんじゃないぞ! 」
兄、そして弟の死
三田学園
上級生の鉄拳
不良の日々
父の手紙
浪人、そして青山学院大学へ
「東京で一緒に暮らそう」
妻、俊子との出会い

第三章 日活
日活という「人生の分岐器」
大食堂でスカウト
「俳優なんかやっていられるか! 」
石原裕次郎との邂逅
ピンクのスーツ
吉永小百合さん

第四章 運命
「くちなしの花」
「勝海舟」を降板
九カ月におよぶ入院
「紅白」に初出場
東大病院へ緊急入院
病気を誘発する「自家中毒」
「死」というもの

第五章 裕次郎に殉じる
「俳優渡哲也」の苦悩
裕次郎、倒れる
石原裕次郎を、この手で殺す
回復に向けて
「哲よ、美味しい酒を飲みたいよ」
社長業を引き受ける

第六章 壮絶なる日々
腸のポリープ
俺は、がんなのか
息子の涙
全摘出と部分切除の葛藤
手術直前の〝直訴〟
石原裕次郎記念館
洗腸の苦闘
ストマをつけた生活
母の死
阪神・淡路大震災
大病後の初舞台
新たながんが見つかる

第七章 勇退
舘ひろしの結婚
小児がん制圧に向けて
「西部警察」の復活へ
ロケでの事故
二十三回忌法要
渡哲也社長勇退 小林正彦専務勇退

付記 青志社社長 阿蘇品 蔵

特別寄稿 側近が語った「渡哲也さん最後の日々」
石原プロモーション専務 浅野謙治郎

人生について
がんを宣告されたときには自分の未来についていろんなことを想定し、深く悩みました。人の命とか、人間の有りようとか、また家族のことや、あるいは石原プロ社員のことなどが心を占めたのです。そういうことを考えても、何も結論が出なくて、自問自答の果てに得たのが、結局人生は、なるにようにしかならず、どこか天命というものに従わざるを得ないところがあるのでは、ということでした。そう考えると、いま与えられたこの一瞬を精一杯に生きることしかないのではないでしょうか。短くてもいい、後悔のない生き方を大切にしたい。
渡哲也
昨夏、昭和最後の大スターだった渡哲也さんが逝去したが、本書はさりげない自伝である(ALLREVIEWS事務局注:本書評執筆年は2021年)。「生まれつきのノンキモノでナマケモノ」というのが彼の口癖だったという。でも、数年前に弟の俳優・渡瀬恒彦さんが亡くなったことは周知だが、幼少期に、すでに兄と末弟が亡くなっていたということを知ると、胸が詰まる。根っから気どらず、謙虚でいたような人柄の裏に、ある種の悲痛な諦念があったのだろう。

一人の人間としては気楽にいたかったのに、俳優としては人知れず苦悩もあったのだろう。なにしろ、心酔していた石原裕次郎さんの死後、石原プロの社長という重職にもあったのだから、呑気な怠け者ではいられなかったにちがいない。

若いころ、裕次郎さんから忠告されたことが印象深いという。「俳優同士で酒飲むんなら、スタッフと飲むんだぞ」とも「俳優である前に一人の社会人でなくちゃだめだ」とも。人気が出たからと勘違いせずに、支えてくれるスタッフを大事にしろ、とはボスたる者の心得。そのボスから「勇気と生き方」を学んだという感慨は心に響く。華やかな沈着さがまぶしく、まさしく親方のようだった。
流れゆくままに / 渡 哲也
流れゆくままに
  • 著者:渡 哲也
  • 出版社:青志社
  • 装丁:単行本(320ページ)
  • 発売日:2021-03-28
  • ISBN-10:4865901140
  • ISBN-13:978-4865901146
内容紹介:
五度の大病に打ち克つものの、七十八歳で逝去した昭和最後の映画スターが遺した凄烈で壮絶なる自伝。運は振り向いてくれたけど病魔には容赦なく襲われた。長く生きることよりも〝生き方〟を… もっと読む
五度の大病に打ち克つものの、七十八歳で逝去した昭和最後の映画スターが遺した凄烈で壮絶なる自伝。
運は振り向いてくれたけど病魔には容赦なく襲われた。
長く生きることよりも〝生き方〟を大切にしたい

秘蔵写真34点掲載

目次
第一章 石原プロ
人生
俳優
ありのままの結婚
日活との訣別
石原プロが倒産の危機
裕次郎の涙
撮影中に倒れる
わが子の命
父の死

第二章 青春の彷徨
淡路島岩屋
母、雅子
明治男の一徹さ
「道彦、死ぬんじゃないぞ! 」
兄、そして弟の死
三田学園
上級生の鉄拳
不良の日々
父の手紙
浪人、そして青山学院大学へ
「東京で一緒に暮らそう」
妻、俊子との出会い

第三章 日活
日活という「人生の分岐器」
大食堂でスカウト
「俳優なんかやっていられるか! 」
石原裕次郎との邂逅
ピンクのスーツ
吉永小百合さん

第四章 運命
「くちなしの花」
「勝海舟」を降板
九カ月におよぶ入院
「紅白」に初出場
東大病院へ緊急入院
病気を誘発する「自家中毒」
「死」というもの

第五章 裕次郎に殉じる
「俳優渡哲也」の苦悩
裕次郎、倒れる
石原裕次郎を、この手で殺す
回復に向けて
「哲よ、美味しい酒を飲みたいよ」
社長業を引き受ける

第六章 壮絶なる日々
腸のポリープ
俺は、がんなのか
息子の涙
全摘出と部分切除の葛藤
手術直前の〝直訴〟
石原裕次郎記念館
洗腸の苦闘
ストマをつけた生活
母の死
阪神・淡路大震災
大病後の初舞台
新たながんが見つかる

第七章 勇退
舘ひろしの結婚
小児がん制圧に向けて
「西部警察」の復活へ
ロケでの事故
二十三回忌法要
渡哲也社長勇退 小林正彦専務勇退

付記 青志社社長 阿蘇品 蔵

特別寄稿 側近が語った「渡哲也さん最後の日々」
石原プロモーション専務 浅野謙治郎

人生について
がんを宣告されたときには自分の未来についていろんなことを想定し、深く悩みました。人の命とか、人間の有りようとか、また家族のことや、あるいは石原プロ社員のことなどが心を占めたのです。そういうことを考えても、何も結論が出なくて、自問自答の果てに得たのが、結局人生は、なるにようにしかならず、どこか天命というものに従わざるを得ないところがあるのでは、ということでした。そう考えると、いま与えられたこの一瞬を精一杯に生きることしかないのではないでしょうか。短くてもいい、後悔のない生き方を大切にしたい。
渡哲也

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2021年5月22日

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