書評
堀江 敏幸「2025年 この3冊」毎日新聞|<1>市村 弘正『市村弘正著作集』上・下(集英社) <2>究極Q太郎『散歩依存症』(現代書館) <3>奥田 亡羊『ぼろんじ』(書肆侃侃房)
2025年「この3冊」
<1>市村 弘正『市村弘正著作集』上・下(集英社)
<2>究極Q太郎『散歩依存症』(現代書館)
<3>奥田 亡羊『ぼろんじ』(書肆侃侃房)
<1>小さなもの、弱いものへの、全的な同期の姿勢。同情や共感ではなく、それらに刻みこまれた苦しみを太くてつよい思考の針金でつなぎ、「消えゆく世界の残像と影」をまっすぐに見つめること。硬い言葉を硬くしない、音楽がある。
<2>多様性や弱者に不寛容な世のなかといかに向きあうか。自身の「弱い力」を信じ、たがいの弱さを認識して依存しあうこと。ここでの散歩は息抜きではない。詩心と覚悟と持続性が求められる、きびしい旅だ。
<3>「旅ならば草の枕と思ひをり治療マスクの網のさみどり」。今春亡くなった歌人の第四歌集『虚国(むなくに)』を含む全歌集。ぼろんじは『徒然草』から採られた言葉。はみ出し者、弱者の圏域の住人だ。その弱さの先に、「茫漠とわれを支へる確かな未来」がひろがる。
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