書評
『空の香りを愛するように』(幻冬舎)
トヨザキ的評価軸:
「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
◎「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」
語り手の〈あたし〉は有能なOL。ところが、ある日集団レイプを受け、その流れで美少年の投身自殺まで目撃。でもって、一緒に暴行された女の子からHIV陽性だったことを告げられて病院に検査を受けに行くと、妊娠発覚。おまけに、子宮の中にいたのは鳥の卵みたいな不思議な生命体。〈あたし〉には彼氏がいるんだけど、レイプされた上にへんてこなものを宿してしまったせいで二度と妊娠できない身体になってしまったことや、HIVポジティブかもしれないことを告白できないでいる。そんな彼女の前に現れて、「鳥の影から逃げないで。逃げたら、一番大切なものを失うから」という謎めいた言葉を残す少年。そのメッセージに背中を押されるように、〈あたし〉はレイプによって確信犯的にエイズウィルスをまき散らしている男に立ち向かっていく――。
例の早大のスーパーフリー事件を思わせる設定や、バブル崩壊、いじめ、援交、非加熱製剤輸血によるHIV感染、新宿二丁目のウリ、リストカット、戦艦大和の沖縄特攻作戦など、これでもかとばかりに投入されているクリシェの数々と、その中に時折挟まれるトンデモ言説。トンネルで霊に囲まれる体験の後、地上に戻った時の感想を〈まるで初めて北極圏走破を達成した犬橇の探検隊のように、気が昂っていた〉とたとえる稚拙な文章。あれ、これって何かに似ていると思ったら、Yoshiの『Deep Loveアユの物語』じゃございません? あそこまで酷くないにしても、精神構造はほぼ同じレベルなんであります。
で、そのお粗末な内容に比例して寒~いのが、表紙写真に毎回可愛いモデルを使ってること。あたかも作者自身であるかのように思わせるあざとい装丁! 桜井亜美の実名を知った時の、わたくしの驚きたるやっ。桜井ファンに告ぐ。あんたら、騙されてるっちゅうの。にもかかわらず、これが二百万部突破記念作品になるほど売れてるってんだから……。もっと他にいくらでも読む本はございましょうに。
【この書評が収録されている書籍】
「金の斧(親を質に入れても買って読め)」
「銀の斧(図書館で借りられたら読めば―)」
◎「鉄の斧(ブックオフで100円で売っていても読むべからず)」
不肖トヨザキもそろそろ裏の貌をお見せいたしましょう
せっかく、お隣のページで連載しておられる滝本誠さんから「女帝」だの、当コラムの上におられる町山智浩さんの「下半身」だの、ありがた~いご紹介をいただいたわけですから、不肖トヨザキもそろそろ裏の貌をお見せいたしましょう。今回は連載が始まって以来初の鉄の斧本を毒舌仕様で取り上げます。ていうか、鉄とすら呼びたくないし。アルミニウム、犬のウンコの中に押し込まれた一円玉、なんだかそんなもの。つまり、桜井亜美、そんなもの。語り手の〈あたし〉は有能なOL。ところが、ある日集団レイプを受け、その流れで美少年の投身自殺まで目撃。でもって、一緒に暴行された女の子からHIV陽性だったことを告げられて病院に検査を受けに行くと、妊娠発覚。おまけに、子宮の中にいたのは鳥の卵みたいな不思議な生命体。〈あたし〉には彼氏がいるんだけど、レイプされた上にへんてこなものを宿してしまったせいで二度と妊娠できない身体になってしまったことや、HIVポジティブかもしれないことを告白できないでいる。そんな彼女の前に現れて、「鳥の影から逃げないで。逃げたら、一番大切なものを失うから」という謎めいた言葉を残す少年。そのメッセージに背中を押されるように、〈あたし〉はレイプによって確信犯的にエイズウィルスをまき散らしている男に立ち向かっていく――。
例の早大のスーパーフリー事件を思わせる設定や、バブル崩壊、いじめ、援交、非加熱製剤輸血によるHIV感染、新宿二丁目のウリ、リストカット、戦艦大和の沖縄特攻作戦など、これでもかとばかりに投入されているクリシェの数々と、その中に時折挟まれるトンデモ言説。トンネルで霊に囲まれる体験の後、地上に戻った時の感想を〈まるで初めて北極圏走破を達成した犬橇の探検隊のように、気が昂っていた〉とたとえる稚拙な文章。あれ、これって何かに似ていると思ったら、Yoshiの『Deep Loveアユの物語』じゃございません? あそこまで酷くないにしても、精神構造はほぼ同じレベルなんであります。
で、そのお粗末な内容に比例して寒~いのが、表紙写真に毎回可愛いモデルを使ってること。あたかも作者自身であるかのように思わせるあざとい装丁! 桜井亜美の実名を知った時の、わたくしの驚きたるやっ。桜井ファンに告ぐ。あんたら、騙されてるっちゅうの。にもかかわらず、これが二百万部突破記念作品になるほど売れてるってんだから……。もっと他にいくらでも読む本はございましょうに。
【この書評が収録されている書籍】
ALL REVIEWSをフォローする