書評

『かたづの!』(集英社)

  • 2019/04/16
かたづの! / 里中 満智子
かたづの!
  • 著者:里中 満智子
  • 出版社:集英社
  • 装丁:単行本(296ページ)
  • 発売日:2019-03-05
  • ISBN-10:4087861112
  • ISBN-13:978-4087861112
内容紹介:
直木賞作家の歴史小説『かたづの!』を日本を代表する漫画家が丹念かつ流麗にコミック化!江戸時代、女性という立場で、清心尼はいかにして有象無象の敵を前に行き抜いたのか。「武器を持た… もっと読む
直木賞作家の歴史小説『かたづの!』を
日本を代表する漫画家が丹念かつ流麗にコミック化!

江戸時代、女性という立場で、清心尼はいかにして
有象無象の敵を前に行き抜いたのか。
「武器を持たない戦い」を信条とする女大名の一代記。

慶長5年(1600年)、角を一本しか持たないカモシカ
が、八戸南部氏20代当主である直政の妻・祢々と出会う。
お互いに惹かれ、両者は友情を育む。やがてカモシカは
寿命で息を引き取ったものの意識は残り、祢々を手助け
する一本の角――南部の秘宝・片角(かたづの)となる。
平穏な生活を襲った、城主である夫と幼い嫡男の不審死。
その陰には、叔父である南部宗家・利直の策略が絡んでいた。
東北の地で女性ながら領主となった彼女は、数々の困難に
どう立ち向かったのか。戦をせずに家臣と領民を守り抜いた
江戸時代唯一の女大名「清心尼」の一代記。
八戸・遠野を舞台に描く、中島京子氏初の歴史ファンタジー
小説の世界観を、漫画で再現した最高傑作。


里中 満智子(さとなかまちこ)
1948年1月24日、大阪生まれ。
第1回講談社新人漫画賞を受賞し16歳でデビュー。
72年『あした輝く』『姫が行く!』 で講談社出版文化賞受賞。
82年『狩人の星座」で講談社漫画賞を受賞。
2006年日本漫画家協会文部科学大臣賞受賞。
10年文化庁長官表彰受賞。
13年古事記出版大賞太安万侶賞受賞。
14年外務大臣表彰受賞。
15年持統天皇を主人公にした『天上の虹』を32年かけて完結。
日本漫画家協会理事長、文化庁日本遺産審査委員会委員。

内部抗争にのまれず気高く生きる女性大名

義弟が弘前で仕事をしているので、弘前と八戸に微妙な確執があることを彼から聞いてはいた。歴史研究者として、津軽と南部の争い(津軽が南部から自立したことに始まる)は知っていたが、なぜ八戸?と疑問を持ちながら聞き流していた。

なるほどそうか、と理解したのは昨年現地にうかがった時である。甲斐(かい)国南部郷から東北地方に移ってきた清和源氏の南部氏には、やがて宗家になって盛岡で栄える三戸南部家とは別に八戸南部家があり、南北朝時代の南部氏の本拠はむしろ八戸であった。だから八戸の櫛引八幡宮(くしひきはちまんぐう)には南朝から賜ったという美麗な大鎧(よろい)(国宝)が現存するし、津軽と南部の争いは弘前と八戸の軋轢(あつれき)につながるのだ。

本作中に、古代の朝廷軍に滅ぼされた蝦夷(えぞ)の族長・伊加古の霊が厳かに現れる。東北の歴史は中央との戦いの歴史であり、敗北の歴史である。また更に悲しいことに、中央との関わりの中で、東北の勢力は相互に戦ってきた。南部氏内部にも三戸と八戸の熾烈(しれつ)な戦いがあった。それを描くのが本作で、主人公は八戸南部家の姫、清心尼。江戸時代を通じ唯一の女性大名といわれる人物であるが、その経歴をたどるのは容易ではない。作者の中島京子さんはきっとたくさんの史料を読み解いたのだろう、複雑な南部家の内部の抗争をみごとに再現している。

そして清心尼に生命を吹き込んだもうお一人が、巨匠・里中満智子さんである。八戸南部家は苦難の末に、あの遠野へと居を移す。豊かな自然を背景に、動物の霊や妖怪も登場しながら、彼女の気高い生きざまが描写される。物語は哀切ではあるけれど、夫や子どもを失いながら、「かたづの」の如くひとり「生きる」清心尼の凜々(りり)しい姿は、読者を励ましてやまない。
かたづの! / 里中 満智子
かたづの!
  • 著者:里中 満智子
  • 出版社:集英社
  • 装丁:単行本(296ページ)
  • 発売日:2019-03-05
  • ISBN-10:4087861112
  • ISBN-13:978-4087861112
内容紹介:
直木賞作家の歴史小説『かたづの!』を日本を代表する漫画家が丹念かつ流麗にコミック化!江戸時代、女性という立場で、清心尼はいかにして有象無象の敵を前に行き抜いたのか。「武器を持た… もっと読む
直木賞作家の歴史小説『かたづの!』を
日本を代表する漫画家が丹念かつ流麗にコミック化!

江戸時代、女性という立場で、清心尼はいかにして
有象無象の敵を前に行き抜いたのか。
「武器を持たない戦い」を信条とする女大名の一代記。

慶長5年(1600年)、角を一本しか持たないカモシカ
が、八戸南部氏20代当主である直政の妻・祢々と出会う。
お互いに惹かれ、両者は友情を育む。やがてカモシカは
寿命で息を引き取ったものの意識は残り、祢々を手助け
する一本の角――南部の秘宝・片角(かたづの)となる。
平穏な生活を襲った、城主である夫と幼い嫡男の不審死。
その陰には、叔父である南部宗家・利直の策略が絡んでいた。
東北の地で女性ながら領主となった彼女は、数々の困難に
どう立ち向かったのか。戦をせずに家臣と領民を守り抜いた
江戸時代唯一の女大名「清心尼」の一代記。
八戸・遠野を舞台に描く、中島京子氏初の歴史ファンタジー
小説の世界観を、漫画で再現した最高傑作。


里中 満智子(さとなかまちこ)
1948年1月24日、大阪生まれ。
第1回講談社新人漫画賞を受賞し16歳でデビュー。
72年『あした輝く』『姫が行く!』 で講談社出版文化賞受賞。
82年『狩人の星座」で講談社漫画賞を受賞。
2006年日本漫画家協会文部科学大臣賞受賞。
10年文化庁長官表彰受賞。
13年古事記出版大賞太安万侶賞受賞。
14年外務大臣表彰受賞。
15年持統天皇を主人公にした『天上の虹』を32年かけて完結。
日本漫画家協会理事長、文化庁日本遺産審査委員会委員。

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