プロローグ「なぜ人は、それでも走り続けるのか」
このレースと関わるのが3回目ということに、縁を感じる。日本海から太平洋まで、北、中央、南にわたる日本アルプスすべてを縦断して8日間以内に走って踏破してしまおうという、圧倒的なスケールの山岳レース。2年ごとの開催のたびに、次々と新たなる挑戦者が現れる。何度も連続して参加する猛者もいる。その動機も様々。私たちNHK取材班が最初に密着して制作した2012年大会の番組を見て、今回(2018年開催)のレースを目指した人もいると聞く。制作者冥利に尽きる。
「トランス・ジャパン・アルプス・レース(TJAR)」
どうして、こんな常識外れのレースに出ようと思うのか。2012年に初めて番組をつくったときから、不思議で仕方がなかった。出場選手それぞれに話を聞いてみたい、という好奇心は、今も変わらない。
「なぜ人は、走るのか」
それが2012年にこのレースを番組化・書籍化したときのテーマのひとつでもあった。
であるとすると、今回は
「なぜ人は、それでも走り続けるのか」
といったところか。
本書籍は2018年10月27日19時からNHK BSプレミアムで放送した『激走! 日本アルプス大縦断 ~2018 終わりなき戦い~』の内容に、独自取材を追加して構成したものである。
30人の選手、全員にドラマがあり、人生がある。走っている間に選手たちが感じ、考え、打ち明けてくれた声に耳を傾けていただきたい。
『激走! 日本アルプス大縦断 ~2018 終わりなき戦い~』
担当チーフ・プロデューサー
齊藤倫雄