書評

『旅の効用: 人はなぜ移動するのか』(草思社)

  • 2020/04/04
旅の効用: 人はなぜ移動するのか / ペール・アンデション
旅の効用: 人はなぜ移動するのか
  • 著者:ペール・アンデション
  • 翻訳:畔上 司
  • 出版社:草思社
  • 装丁:単行本(352ページ)
  • 発売日:2020-01-24
  • ISBN-10:4794224362
  • ISBN-13:978-4794224361
内容紹介:
インドを中⼼に世界を旅してきたジャーナリストが、⾃他の旅の記憶をていねいに辿りながら「⼈が旅に出る理由」を重層的に考察するエッセイ。 なぜ人は何度でも、何歳になろうと旅に出るべ… もっと読む
インドを中⼼に世界を旅してきたジャーナリストが、
⾃他の旅の記憶をていねいに辿りながら
「⼈が旅に出る理由」を重層的に考察するエッセイ。
なぜ人は何度でも、何歳になろうと旅に出るべきなのか。
それは旅こそが私たちにとって最⾼のセラピーであり、
⾃分を育む⾏為にほかならないからだ。
旅好きも、旅が遠くなった⼈も必読の滋味あふれる旅論。
【スウェーデン発、欧州ベストセラー!】

(本書より引用)
不機嫌という病を治すにはまず、自分の安全領域から外に飛び出すことだ。
そうすれば、すべてをコントロールしなくても日々がうまく運んでいくと気づくこともある。
いったん異文化の中に身を置けば、足が地に着かなくなっても
「すべてうまく行くだろう」と信じることができる。

変化がなければ心は消耗する。だが新たな見方をするようになれば、新たな展望が開ける。
旅をすれば感覚が研ぎ澄まされ、世間や家庭内の状況に対して注意深くなる。
今まで無関心だったことにも、不意に何かを感じるようになるのだ。
今まで見えていなかったことが不意に見えてくるのである。

美しい言葉に言い直すとすれば、旅と遊牧民の生活様式こそイデオロギーだった。
旅は、前もって予見可能であってはならず、ページを開いた瞬間の
本のようでなければならなかった。
旅人は、自分が今から何と出会うか、誰と遭遇するかを知っていてはならなかった。
たくさんの人に会い、たくさん本を読み、多くの旅を重ねる。人間は「人・本・旅」でしか賢くなれない動物だと僕は思っている。ホモ・モビリタス(移動するヒト)という言葉があるが1万3千年前まで私たちは遊牧民だった。だから「変化がなければ心は消耗する」のだ。旅好きの僕にはこの感覚がとてもよくわかる。空の旅は感覚を歪めると考える筆者は、列車、ヒッチハイク、ラクダなどを選ぶ。友人ペトラの住むギリシャのナクソス島とムンバイには何度でも戻りたい。リピーターの愉悦。あるある。もちろん一度きりの邂逅(かいこう)も捨てがたい。北京の小路でお茶を注いでくれた老人の存在感。世界には二つの方向が存在するという。「自分の中に引きこもろうとする傾向」と「開放的になろうとする傾向」。人は旅で本当に変わるのか。それは本書を読んでください。巻末には読めば放浪したくなる旅行記22点が。旅好きの必読書ではないか。
旅の効用: 人はなぜ移動するのか / ペール・アンデション
旅の効用: 人はなぜ移動するのか
  • 著者:ペール・アンデション
  • 翻訳:畔上 司
  • 出版社:草思社
  • 装丁:単行本(352ページ)
  • 発売日:2020-01-24
  • ISBN-10:4794224362
  • ISBN-13:978-4794224361
内容紹介:
インドを中⼼に世界を旅してきたジャーナリストが、⾃他の旅の記憶をていねいに辿りながら「⼈が旅に出る理由」を重層的に考察するエッセイ。 なぜ人は何度でも、何歳になろうと旅に出るべ… もっと読む
インドを中⼼に世界を旅してきたジャーナリストが、
⾃他の旅の記憶をていねいに辿りながら
「⼈が旅に出る理由」を重層的に考察するエッセイ。
なぜ人は何度でも、何歳になろうと旅に出るべきなのか。
それは旅こそが私たちにとって最⾼のセラピーであり、
⾃分を育む⾏為にほかならないからだ。
旅好きも、旅が遠くなった⼈も必読の滋味あふれる旅論。
【スウェーデン発、欧州ベストセラー!】

(本書より引用)
不機嫌という病を治すにはまず、自分の安全領域から外に飛び出すことだ。
そうすれば、すべてをコントロールしなくても日々がうまく運んでいくと気づくこともある。
いったん異文化の中に身を置けば、足が地に着かなくなっても
「すべてうまく行くだろう」と信じることができる。

変化がなければ心は消耗する。だが新たな見方をするようになれば、新たな展望が開ける。
旅をすれば感覚が研ぎ澄まされ、世間や家庭内の状況に対して注意深くなる。
今まで無関心だったことにも、不意に何かを感じるようになるのだ。
今まで見えていなかったことが不意に見えてくるのである。

美しい言葉に言い直すとすれば、旅と遊牧民の生活様式こそイデオロギーだった。
旅は、前もって予見可能であってはならず、ページを開いた瞬間の
本のようでなければならなかった。
旅人は、自分が今から何と出会うか、誰と遭遇するかを知っていてはならなかった。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2020年2月15日

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