書評

『テヘランのすてきな女』(晶文社)

  • 2024/09/22
テヘランのすてきな女 / 金井 真紀
テヘランのすてきな女
  • 著者:金井 真紀
  • 出版社:晶文社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(320ページ)
  • 発売日:2024-06-25
  • ISBN-10:4794974264
  • ISBN-13:978-4794974266
内容紹介:
謎めいた国・イランで、女たちの人生を拾い集めた。女は髪を出してはいけない、肌を見せてはいけない。詩を愛するが、酒はない。謎めいたイスラム教国家に生きる女性たちに、文筆家・イラス… もっと読む
謎めいた国・イランで、女たちの人生を拾い集めた。

女は髪を出してはいけない、肌を見せてはいけない。詩を愛するが、酒はない。謎めいたイスラム教国家に生きる女性たちに、文筆家・イラストレーターの金井真紀が会いに行く。公衆浴場、美容院、はては女子相撲部まで、男子禁制スポットにどかどか潜入!

スカーフのかぶり方を監視する風紀警察、国と闘う弁護士、男のフリをしてサッカーをしていた人、移民の子どもに勉強を教える人、命がけの性的マイノリティetc...。ベストセラー『パリのすてきなおじさん』の著者が、テヘランに生きる女たちと、とことんおしゃべり。

世界はいつも想像の何倍も込み入っている。(本書より)

きっとにんげんが好きになるインタビュー&スケッチ集。


【目次】

はじめに

Ⅰ たたかう女
ベリーショートの通訳
チャドルをやめた主婦
正義のために走り続ける弁護士
風紀警察と街で見かけた女たち
〈テヘラン散歩〉ハンマーム


Ⅱ はたらく女
コンピュータエンジニア
細密画の絵師
タイル作家
物語を書く姉妹
美容整形会社勤務
百戦錬磨の看護師
〈テヘラン散歩〉美容院へ

Ⅲ スポーツする女
お母さんの天国公園
ドラゴンボートの選手
女子サッカーU17代表監督で社会学者
”ラシュトの鷹”と呼ばれた女子代表監督
イラン女子相撲の選手たち
〈テヘラン散歩〉ピクニック


Ⅳ 居場所をさがす女たち
日本に留学したトランスジェンダーの大学生
「アデル、ブルーは熱い色」を見たレズビアンの大学生
反スカーフデモに参加したバイセクシャルの大学生
キリスト教会で会った人
ピクルスをつくるアフガニスタン移民
寺子屋の校長先生
〈テヘラン散歩〉ホームパーティー

Ⅴ 見てきた女
トルコにしょっちゅう行く人
パラリンピック委員会の人
敬虔なイスラム教徒
〈テヘラン散歩〉空港

おわりに
国という主語からは、そこにいる人々の表情は見えない。でも、暮らしている人々から国を見ると、国の輪郭がしっかり描けるし、頭の中に用意されていたイメージも変わる。あんな国なら黙り込んでいるに違いないと思われている人たちだって、それぞれ怒って笑って泣いている。知るのを怠っているのは私たち。

2022年9月、イランで、正しくスカーフで覆っていなかったとして、22歳のマフサー・アミーニーさんが逮捕され、その後死亡した。反スカーフデモが全土に広がり、多数の死傷者が出た。奪われた命のために、自らの命をかけて抗議する。そこで暮らすのは、どんな女性たちなのか。

『テヘランのすてきな女』(金井真紀・文と絵、晶文社、1980円)は文筆家・イラストレーターの著者が、イランの首都・テヘランを訪ね、女性たちに会い続けた記録だ。通訳が席を外して二人きりになると、「わたし、政府が大嫌いなの!」と耳に口を寄せて英語でささやく女性がいた。「そうか、人はだれもが一色ではないのだな」

女性弁護士のスィーマー・グーシェさんは、女性の権利が奪われている国で、レイプ被害などにあった女性の弁護を続けてきた。「イランの女性たちは自分を偽るよう強いられてきた」、家の中では自由に振る舞っても、外ではしない。「まるで二重人格ですよ」とスィーマーさん。

抑圧の中にあって、思考停止しているわけではない。むしろ、思考はグツグツ煮込まれている。だから強い。ブレない。ホームパーティーで出会ったゴルロフさんが「この国ではなにもしなくても危ないでしょ。どうせ危ないんだからデモに参加したほうがいいと思って」と言う。

誰とでも軽やかに話す著者に心を開く。その語りから、この国の水面下にある怒りも希望も見えてくる。でも、踏んづける人たちがずっといる。「まったく世界のクソは共通している」との著者の吐露が象徴的だが、泣き笑いを無効化する「クソ」にあらがうための、すがすがしい連帯が詰まっている。
テヘランのすてきな女 / 金井 真紀
テヘランのすてきな女
  • 著者:金井 真紀
  • 出版社:晶文社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(320ページ)
  • 発売日:2024-06-25
  • ISBN-10:4794974264
  • ISBN-13:978-4794974266
内容紹介:
謎めいた国・イランで、女たちの人生を拾い集めた。女は髪を出してはいけない、肌を見せてはいけない。詩を愛するが、酒はない。謎めいたイスラム教国家に生きる女性たちに、文筆家・イラス… もっと読む
謎めいた国・イランで、女たちの人生を拾い集めた。

女は髪を出してはいけない、肌を見せてはいけない。詩を愛するが、酒はない。謎めいたイスラム教国家に生きる女性たちに、文筆家・イラストレーターの金井真紀が会いに行く。公衆浴場、美容院、はては女子相撲部まで、男子禁制スポットにどかどか潜入!

スカーフのかぶり方を監視する風紀警察、国と闘う弁護士、男のフリをしてサッカーをしていた人、移民の子どもに勉強を教える人、命がけの性的マイノリティetc...。ベストセラー『パリのすてきなおじさん』の著者が、テヘランに生きる女たちと、とことんおしゃべり。

世界はいつも想像の何倍も込み入っている。(本書より)

きっとにんげんが好きになるインタビュー&スケッチ集。


【目次】

はじめに

Ⅰ たたかう女
ベリーショートの通訳
チャドルをやめた主婦
正義のために走り続ける弁護士
風紀警察と街で見かけた女たち
〈テヘラン散歩〉ハンマーム


Ⅱ はたらく女
コンピュータエンジニア
細密画の絵師
タイル作家
物語を書く姉妹
美容整形会社勤務
百戦錬磨の看護師
〈テヘラン散歩〉美容院へ

Ⅲ スポーツする女
お母さんの天国公園
ドラゴンボートの選手
女子サッカーU17代表監督で社会学者
”ラシュトの鷹”と呼ばれた女子代表監督
イラン女子相撲の選手たち
〈テヘラン散歩〉ピクニック


Ⅳ 居場所をさがす女たち
日本に留学したトランスジェンダーの大学生
「アデル、ブルーは熱い色」を見たレズビアンの大学生
反スカーフデモに参加したバイセクシャルの大学生
キリスト教会で会った人
ピクルスをつくるアフガニスタン移民
寺子屋の校長先生
〈テヘラン散歩〉ホームパーティー

Ⅴ 見てきた女
トルコにしょっちゅう行く人
パラリンピック委員会の人
敬虔なイスラム教徒
〈テヘラン散歩〉空港

おわりに

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初出メディア

毎日新聞

毎日新聞 2024年7月20日

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