前書き

『[ヴィジュアル・エンサイクロペディア]世界史を変えた戦い』(原書房)

  • 2020/08/19
[ヴィジュアル・エンサイクロペディア]世界史を変えた戦い / DK社
[ヴィジュアル・エンサイクロペディア]世界史を変えた戦い
  • 著者:DK社
  • 翻訳:甲斐 理恵子
  • 出版社:原書房
  • 装丁:大型本(256ページ)
  • 発売日:2020-07-18
  • ISBN-10:4562057572
  • ISBN-13:978-4562057573
内容紹介:
古代の「マラトンの戦い」から湾岸戦争の「砂漠の嵐作戦」まで、3000年にわたる140以上の戦いを地図や図版を通じて解説。
歴史の方向を変えた戦闘は、いったいいくつあるのだろう?
これは難しい質問だ。
新刊『[ヴィジュアル・エンサイクロペディア]世界史を変えた戦い』で読者は、古代世界から南北戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦、冷戦、そして現代の紛争まで、人類3000年における歴史の戦場を旅する。
本書では中世の戦いや偉大な海戦からハイテク空中戦の時代に至るまで、武器、兵士、軍事戦略などの主要な作戦行動が簡潔に図示および分析されている。アレクサンドロス大王、ナポレオン、ロンメルなどの有名な軍事指導者が紹介され、重要な武器、防具、装備が説明される。
450点以上の描きおろし地図とオールカラーの図版・写真はこれまでおこなわれた140あまりのもっとも重要な戦争の背後にある物語を明らかにし、運命的な決定がどのように輝かしい勝利と圧倒的な敗北につながったかを示している。
歴史的なターニング・ポイントには何があったのか――『世界史を変えた戦い』の「はじめに」を公開する。

戦術的決断がいかに歴史を変えたか

紛争は、エジプトやメソポタミアで人類初の文明が誕生して以来、地上のあらゆる場所で絶えたことのない人類の歴史の一部だ。
戦争は、歴史の形成で重要な役割を果たす。戦いに敗れると、文明や帝国は急激に衰退し、近代の国家も弱体化した。一方勝利は、土地や人々、資源の獲得を意味した。
本書は、世界でもっとも有名で後世への影響も大きかった戦争を厳選し、年代順に追っていく。
その内容は3000年以上にわたり、紀元前1274年のエジプトとヒッタイトによるカデシュの戦いから、2003年の多国籍軍によるサダム・フセイン統治下のイラク侵攻におよぶ。南極大陸を除くあらゆる大陸の戦闘が対象だ。


戦術と科学技術

何百年ものあいだ、皇帝、軍司令官、将軍、提督は同じ目標や苦難に直面してきた。
敵の裏をかくこと、可能な限りの物資や兵力を集めて敵の弱点を攻めること、敵の策略に陥らないこと、そして戦いに勝利した場合はその結果を最大限に利用し、敗北した場合は影響を最小限に抑えることだ。
輸送機関や武器の形態は、数百年のあいだに変化し改良されてきた。
たとえばエジプト人やヒッタイト人がカデシュの戦いで使った槍や二輪戦車は、1991年の砂漠の嵐作戦でアメリカ軍が用いたハイテク戦車や巡航ミサイルとはかけ離れて見えるかもしれないが、どちらも歴史を変える力を持っていた。
また、危ういことに、それ単独で起こる戦いはひとつとして存在しない。戦争はつねに、他の出来事の結果なのだ。
皇帝や政治家、一般人の野望、外交戦略の失敗、乏しい資源の争奪戦はその好例だ。

戦闘のタイプ

本書では、陸戦および海戦のさまざまなタイプの戦闘に注目する。
たとえばサラディン率いるイスラム軍と十字軍が戦った1187年のヒッティーンの戦いのように、戦場での両軍の直接交戦から、史上最大の戦車戦とも言われる第2次世界大戦中のクルスクの戦いに代表される複雑な作戦行動まで、ありとあらゆる戦いを網羅する。
海戦では、1588年のスペイン無敵艦隊の海戦から、大日本帝国海軍がロシア海軍に大打撃を与えた1905年の日本海海戦(対馬沖海戦)まで紹介する。
その他にも、長期作戦のひとつである包囲攻撃も検証する。百年戦争中の1429年にはフランスの町オルレアンが包囲され、1453年のオスマン帝国による攻囲ではコンスタンティノープルが陥落しビザンティン帝国の終焉が決定づけられ、1683年のウィーン包囲は、オスマン帝国崩壊のきっかけになった。

歴史の転換点

本書で扱う項目は、いずれも戦史における決定的瞬間なので、その背景や関連事項、結果も概説する。
ハンニバルが大敗し彼の軍隊の侵略が終わりを告げたザマの戦いのように、帝国の崩壊につながった戦闘もあれば、バーブルがデリー・スルタン朝に勝利を収めムガル帝国誕生につながった1526年のパーニーパットの戦いのように、新たな帝国を生む戦いもあった。
他にも、長期戦を終結させた戦闘――たとえば、第2次世界大戦中の1945年のベルリンの戦い――もあれば、大戦開始のきっかけとなった戦闘――第1次世界大戦開戦直後のドイツのパリ侵攻は、1914年のマルヌ会戦で食い止められた――もある。
戦闘自体はさほど有名ではなくても、新たな軍事技術が初めて使用された重要な戦いだった例もある。そのひとつ、1525年のパヴィアの戦いは、携帯操作式の小火器によって勝敗が決した最古の戦いである。
また、革新的な戦術が見事に際立った戦闘もある。たとえば紀元前216年のカンナエの戦いでは、カルタゴの将軍ハンニバルがローマ軍の左右の翼を包囲して勝利したが、この戦術はそれ以降多くの将軍によってさまざまに形を変えて繰り返されてきた。

本書では、各々の戦闘の様子が描かれた同時代や後世の美術品、絵画、写真、工芸品を紹介する。一方、現代の地図と歴史地図によって、特定の戦闘がどのように繰り広げられたかを明らかにする。
また、投石機や最古の大砲から戦争で初めて使われた航空機や戦車まで、重要な武器の解説はもちろん、歴史をたどり軍指揮官や政治指導者――アレクサンドロス大王やユリウス・カエサル、ナポレオン・ボナパルト、チンギス・ハン、シモン・ボリヴァル、ジョージ・ワシントン等々――の人物描写も行う。
史上もっとも重大な戦闘の背景や結果、その余波を描く本書の目的は、戦闘がもたらす深刻な政治的、社会的、経済的影響を誰もが理解できるよう手助けすることだ。王国や帝国が戦場でいかに勝利し、いかに敗北したか、読み解いていこう。

[書き手]DK社(甲斐理恵子翻訳)
[ヴィジュアル・エンサイクロペディア]世界史を変えた戦い / DK社
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  • 著者:DK社
  • 翻訳:甲斐 理恵子
  • 出版社:原書房
  • 装丁:大型本(256ページ)
  • 発売日:2020-07-18
  • ISBN-10:4562057572
  • ISBN-13:978-4562057573
内容紹介:
古代の「マラトンの戦い」から湾岸戦争の「砂漠の嵐作戦」まで、3000年にわたる140以上の戦いを地図や図版を通じて解説。

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