書評

『墓地の書』(松籟社)

  • 2022/12/14
墓地の書 / サムコ・ターレ
墓地の書
  • 著者:サムコ・ターレ
  • 翻訳:木村 英明
  • 出版社:松籟社
  • 装丁:単行本(222ページ)
  • 発売日:2012-04-13
  • ISBN-10:4879843032
  • ISBN-13:978-4879843036
内容紹介:
いかがわしい占い師に「『墓地の書』を書きあげる」と告げられ、「雨が降ったから」作家になった語り手が、社会主義体制解体前後のスロヴァキア社会とそこに暮らす人々を『墓地の書』という小説に描く。
スロヴァキアでの2000年の刊行後、国を越えて話題を呼び、英独仏露の各言語ほかさまざまな国で翻訳が刊行された。

言葉遊びからタレ出す現実 

サムコ・ターレ、ウンコターレ。日曜の朝からごめんくさい。スロヴァキアの地方都市コマールノで、バックミラーつきの荷車でダンボール回収をするこのターレが、本書の著者にして主人公だというからとってもこまーるの。

だって、ターレはスロヴァキア人こそ世界最良と信じて疑わないけれど、彼のまわりはお馬鹿な人ばっか。雷に打たれて以来、キノコで人類を救済する使命を帯びたおじさんとか、おさわりさせてくれる女性だけ占うアル中の老いぼれとかほかにもいろいろ。

ぼくは阿呆(あほう)じゃない、と病気のせいで心身ともに成長しないターレが、現実を額面どおりに語れば語るほど、言葉と現実は裏切りあい、その裂け目から瘴気(しょうき)のようにタレてくる黒いユーモアが、読者の正気をも笑いのなかで宙づりにする。共産党独裁の時代、われ知らず密告者だったターレがいまタレこむ相手はたーれ? もちろんそれは読者であるわれわれ。そうだろう?

そうだとも。
墓地の書 / サムコ・ターレ
墓地の書
  • 著者:サムコ・ターレ
  • 翻訳:木村 英明
  • 出版社:松籟社
  • 装丁:単行本(222ページ)
  • 発売日:2012-04-13
  • ISBN-10:4879843032
  • ISBN-13:978-4879843036
内容紹介:
いかがわしい占い師に「『墓地の書』を書きあげる」と告げられ、「雨が降ったから」作家になった語り手が、社会主義体制解体前後のスロヴァキア社会とそこに暮らす人々を『墓地の書』という小説に描く。
スロヴァキアでの2000年の刊行後、国を越えて話題を呼び、英独仏露の各言語ほかさまざまな国で翻訳が刊行された。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2012年6月24日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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