書評

『ギンガムチェックと塩漬けライム: 翻訳家が読み解く海外文学の名作』(NHK出版)

  • 2026/02/04
ギンガムチェックと塩漬けライム: 翻訳家が読み解く海外文学の名作 / 鴻巣 友季子
ギンガムチェックと塩漬けライム: 翻訳家が読み解く海外文学の名作
  • 著者:鴻巣 友季子
  • 出版社:NHK出版
  • 装丁:単行本(260ページ)
  • 発売日:2025-04-18
  • ISBN-10:4140819871
  • ISBN-13:978-4140819876
内容紹介:
小説の読み解き方がわかる。知ってるつもりだったあの名作の、新たな顔が見えてくる!『嵐が丘』は、相続制度と法律知識を駆使した「不動産小説」だった?アトウッドの『侍女の物語』は現代… もっと読む
小説の読み解き方がわかる。知ってるつもりだったあの名作の、新たな顔が見えてくる!
『嵐が丘』は、相続制度と法律知識を駆使した「不動産小説」だった?
アトウッドの『侍女の物語』は現代アメリカがモデル?
不朽の青春小説『ライ麦畑でつかまえて』は、太宰の『人間失格』に似ている?
これからのポストヒューマン時代に必読の作家、カズオ・イシグロー
当代一の翻訳家・文芸評論家である著者が、誰もが知る名著を全く新しい切り口で解説し、小説のあじわい方を指南する大人向けブックガイド。
あの名作の知られざる“顔”が見えてくる!

誰もが一度はふれたことのある古典的名著から、今こそ読むべき現代作家の“問題作”まで。
著者の翻訳家としての歩みのなかで、思い出深い作品、折にふれて読み返す、大切な名著たちをここに紹介。
翻訳者ならではの原文(英語)の読み解きや、作品理解の深まる英語トリビアがちりばめられていますので、翻訳家志望の方や、英語学習者も楽しめます。

※本書はNHKラジオテキスト「ラジオ英会話」の人気連載「名著への招待」(2021年度~2024年度)を加筆修正してまとめたものです。

原作の深い読みと再解釈

忘れかけていた英米文学の名作と再会する。本書はマーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』やエミリー・ブロンテの『嵐が丘』、ヴァージニア・ウルフの『灯台へ』の訳者による紹介と批評が集められている。

初出は、大西泰斗(ひろと)の名調子で知られるNHK「ラジオ英会話」のテキスト。そのため、英語の学習者も、なるほどとうなずく翻訳の秘訣(ひけつ)が織り込まれている。

たとえば、J・D・サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』に頻繁に登場するyou。漠然とした聞き手や読者を指すgeneral you(総称的なユー)と考えられ、これまでは「あなた」とは訳されず省略されてきた。ところが、村上春樹訳では「君」とはっきり訳出したと指摘する。さらに著者は、回転木馬に乗る妹フィービーが描写される感動的な場面を取り上げ、このときのyouは、弟のアリーではないかと解釈して、年下の男性を思わせる人称代名詞を使い「ちぇっ、おまえもあの場にいてくれたらなあ」と実際に訳してみせる。原文の深い読み込みがある。

そればかりではない。大部、難解だったりする小説のあらすじが、平易に書かれていてすっと頭に入る。これは物語を構造的に捉えて、主人公を再定義する著者の文芸評論家としての才が生きている。さらに、原著者の価値観に縛られずに、現在の時点から再解釈を試みている。たとえば、120年前に書かれた短編の傑作、オー・ヘンリーの『最後のひと葉』を「フリーランスの女性同士のシスターフッド(女性同士の絆)の物語」として捉え直す。しかも、雑誌や広告の仕事が生まれた当時のニューヨークで、ふたりぐらしをするアーティストの卵に心を寄せる。

著者の守備範囲は広い。自身の訳を含む全28篇。エドガー・アラン・ポーからカズオ・イシグロまで。「高尚な文学」にとらわれず、推理、SF、ホラーにも目配りが利いている。子どもの頃、本を手にして、遥(はる)か異界へと旅立っていくときのときめきが甦(よみがえ)ってきた。
ギンガムチェックと塩漬けライム: 翻訳家が読み解く海外文学の名作 / 鴻巣 友季子
ギンガムチェックと塩漬けライム: 翻訳家が読み解く海外文学の名作
  • 著者:鴻巣 友季子
  • 出版社:NHK出版
  • 装丁:単行本(260ページ)
  • 発売日:2025-04-18
  • ISBN-10:4140819871
  • ISBN-13:978-4140819876
内容紹介:
小説の読み解き方がわかる。知ってるつもりだったあの名作の、新たな顔が見えてくる!『嵐が丘』は、相続制度と法律知識を駆使した「不動産小説」だった?アトウッドの『侍女の物語』は現代… もっと読む
小説の読み解き方がわかる。知ってるつもりだったあの名作の、新たな顔が見えてくる!
『嵐が丘』は、相続制度と法律知識を駆使した「不動産小説」だった?
アトウッドの『侍女の物語』は現代アメリカがモデル?
不朽の青春小説『ライ麦畑でつかまえて』は、太宰の『人間失格』に似ている?
これからのポストヒューマン時代に必読の作家、カズオ・イシグロー
当代一の翻訳家・文芸評論家である著者が、誰もが知る名著を全く新しい切り口で解説し、小説のあじわい方を指南する大人向けブックガイド。
あの名作の知られざる“顔”が見えてくる!

誰もが一度はふれたことのある古典的名著から、今こそ読むべき現代作家の“問題作”まで。
著者の翻訳家としての歩みのなかで、思い出深い作品、折にふれて読み返す、大切な名著たちをここに紹介。
翻訳者ならではの原文(英語)の読み解きや、作品理解の深まる英語トリビアがちりばめられていますので、翻訳家志望の方や、英語学習者も楽しめます。

※本書はNHKラジオテキスト「ラジオ英会話」の人気連載「名著への招待」(2021年度~2024年度)を加筆修正してまとめたものです。

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初出メディア

東京新聞

東京新聞 2025年5月11日

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