書評
『自由帳みせて!』(福音館書店)
小学生40名の思いっきり楽しい自由帳を集めた『自由帳みせて!』。刊行を記念して、カラテカの矢部太郎さんにエッセイをお寄せいただきました。子どもたちが自由に描いた様々な絵について、また、ご自身の自由帳の思い出について、語ってくださいました。矢部さんに、今もみなぎる「自由帳マインド」が垣間見えるエッセイです。
僕たちはあの頃、誰もがランドセルの中に自由を持っていた
大人は自由を恐れます。でも僕たちはあの頃、誰もがランドセルの中に自由を持っていました。
小学生が休み時間に書きつづる自由帳を集めたこの本。どのページを開いても奇跡のような圧倒的な輝きが溢れ出てきます。とにかくまっしろなページを好きなことで埋め尽くそうとする様子からはこれぞ自由と思えてなりません。
ページいっぱいに広がる自作迷路(ほぼほぼゴールできない!)、あみだくじ(なんでもこれで決める!)、オリジナルキャラ(謎すぎます!)、自作のマンガ(全15巻以上の大長編も!)などなど、なつかしい!やったやった!ということのオンパレードです。
誤字(ゲームをゲーヌ!など)や略語(漢字ドリルを、かんド!など)もかわいくて見どころです。色々な「おみせやさん」の絵では「ネイルやさん」があり、デートコーデやハロインコーデ(原文まま)などに最先端の自由を感じられます。見開きページの真ん中には“消しかす”がはさまっていたり、破れてセロテープで補修してあるページもあったりと、装丁も自由でサイコーです!
この本を読んで、僕も自由帳を探してみました。うちは父が物持ちがよく、小さい頃のものをかなり取っておいてくれているのですが、それでも自由帳は残されておらず、やはり本来なら失われてしまう運命にある絵たちであり、出版されたことは奇跡に思えて、この本の尊さを再認識しました。
残念ながら自由帳は見つかりませんでしたが、文集や絵日記、連絡帳など残されていた紙の余白に、小学生のたろうくんはびっしり落書きをしていました。自由帳マインド全開で…。理想の城「たろう城」(当時日本の城にハマっていました)や、「学校」という文字を太くして、中に窓や時計や銅像があって校舎になっているもの…うまく説明できないのですが、きっとこういうのみんなやってましたよね?ちなみにこれは小学2年生の朗読の宿題帳の表紙です。

「たろうくん…そこは自由じゃないよ…」。なんて、実は僕は今でも台本などの余白は落書きだらけ、ネタや漫画を描くのは罫線のないノート、自由帳マインドは確実に僕の中に生き続けています。
[書き手]カラテカ 矢部太郎(やべ・たろう)
吉本興業所属。1977年生まれ。お笑い芸人としてだけでなく、舞台やドラマ、映画で俳優としても活躍している。初めて描いた漫画作品『大家さんと僕』で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞、同書は80万部超の大ヒットに。シリーズ累計では120万部を突破。現在、絵本作家である父・やべみつのりとの幼少期の思い出を綴る『ぼくのお父さん』が「小説新潮」誌上で連載中。
僕たちはあの頃、誰もがランドセルの中に自由を持っていた
矢部太郎
大人は自由を恐れます。でも僕たちはあの頃、誰もがランドセルの中に自由を持っていました。小学生が休み時間に書きつづる自由帳を集めたこの本。どのページを開いても奇跡のような圧倒的な輝きが溢れ出てきます。とにかくまっしろなページを好きなことで埋め尽くそうとする様子からはこれぞ自由と思えてなりません。
ページいっぱいに広がる自作迷路(ほぼほぼゴールできない!)、あみだくじ(なんでもこれで決める!)、オリジナルキャラ(謎すぎます!)、自作のマンガ(全15巻以上の大長編も!)などなど、なつかしい!やったやった!ということのオンパレードです。
誤字(ゲームをゲーヌ!など)や略語(漢字ドリルを、かんド!など)もかわいくて見どころです。色々な「おみせやさん」の絵では「ネイルやさん」があり、デートコーデやハロインコーデ(原文まま)などに最先端の自由を感じられます。見開きページの真ん中には“消しかす”がはさまっていたり、破れてセロテープで補修してあるページもあったりと、装丁も自由でサイコーです!
この本を読んで、僕も自由帳を探してみました。うちは父が物持ちがよく、小さい頃のものをかなり取っておいてくれているのですが、それでも自由帳は残されておらず、やはり本来なら失われてしまう運命にある絵たちであり、出版されたことは奇跡に思えて、この本の尊さを再認識しました。
残念ながら自由帳は見つかりませんでしたが、文集や絵日記、連絡帳など残されていた紙の余白に、小学生のたろうくんはびっしり落書きをしていました。自由帳マインド全開で…。理想の城「たろう城」(当時日本の城にハマっていました)や、「学校」という文字を太くして、中に窓や時計や銅像があって校舎になっているもの…うまく説明できないのですが、きっとこういうのみんなやってましたよね?ちなみにこれは小学2年生の朗読の宿題帳の表紙です。

「たろうくん…そこは自由じゃないよ…」。なんて、実は僕は今でも台本などの余白は落書きだらけ、ネタや漫画を描くのは罫線のないノート、自由帳マインドは確実に僕の中に生き続けています。
[書き手]カラテカ 矢部太郎(やべ・たろう)
吉本興業所属。1977年生まれ。お笑い芸人としてだけでなく、舞台やドラマ、映画で俳優としても活躍している。初めて描いた漫画作品『大家さんと僕』で第22回手塚治虫文化賞短編賞を受賞、同書は80万部超の大ヒットに。シリーズ累計では120万部を突破。現在、絵本作家である父・やべみつのりとの幼少期の思い出を綴る『ぼくのお父さん』が「小説新潮」誌上で連載中。
ふくふく本棚 2021年1月10日
「ふくふく本棚」は、絵本・童話にまつわる記事を発信する、福音館書店の公式Webマガジンです。本の紹介や著者へのインタビューなど、絵本・童話のある生活がもっと充実するような情報をお届けしていきます。
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