後書き

『[ヴィジュアル版]タロットと占術カードの世界:起源から21世紀まで』(原書房)

  • 2022/04/14
[ヴィジュアル版]タロットと占術カードの世界:起源から21世紀まで / レティシア・バルビエ
[ヴィジュアル版]タロットと占術カードの世界:起源から21世紀まで
  • 著者:レティシア・バルビエ
  • 翻訳:鏡 リュウジ
  • 監修:鏡 リュウジ
  • 出版社:原書房
  • 装丁:単行本(408ページ)
  • 発売日:2022-03-18
  • ISBN-10:4562071567
  • ISBN-13:978-4562071562
内容紹介:
多様なデッキの稀少コレクションの図像からたどる、カードが象徴する知られざる意味、歴史的な位置づけまで。フルカラー図鑑。
カード占いがブームとなっている現在、もっておきたい稀少コレクションブックが登場しました。「愚者」「教皇」といったカードごとに、さまざまな版の稀少コレクションの図像を一同に見ることができ、図案の象徴的な意味、歴史的な位置づけまで詳細にわかるフルカラー図鑑『[ヴィジュアル版]タロットと占術カードの世界 起源から21世紀まで』から、監訳者あとがきを公開します。


これは大変な本である

また一人、タロットの世界に17番(スター)が現れた。
レティシア・バルビエ、本書の著者である。
この本をこうしていち早く日本に紹介でき、この上なく幸福である。これは訳者あとがきにありがちなリップサービスではない。心からの本音である。
これが本音であると示すには、日本語版の刊行に至ったいきさつをお話しすることが手っ取り早いだろう。本書の編集者、監訳者は英語圏での原書の出版前にPDFにて内容の一部を見ていた。翻訳権エージェントから邦訳を検討してみないかと持ちかけられたのだ。本書だけではない。その折には何冊かのタロット書がエージェントから持ち込まれた。
このところ日本でのタロットブームは盛りあがっているし、本格的なテーブルブックがあってもよいだろう、図鑑的なものがあってもよいはずだ、とどちらかといえば気軽な気持ちで出版企画を進めることにした。図版が多いのでテキスト翻訳も比較的少なく、準備期間も短くすむのではないかという目論見もあった。早い話が美麗なカタログのひとつ、といった気持ちで企画がスタートしたのだ。
しかし全体像を目にしたとき、その気持ちはよい意味で大きく裏切られた。これは大変な本である、ということがすぐにわかったのだ。
そのことは、世界のタロット界の大御所レイチェル・ポラックが本書に寄せた序文にもはっきり指摘されている。
これまでにもタロットを網羅した事典、図版集は存在する。スチュアート・カプランの『タロット百科事典』シリーズ(未邦訳)はその代表にして決定版であろう。しかし、カプランの事典は良くも悪くも、正統的な意味での「事典」である。タロットの歴史、図版、変遷をなるべく客観的に網羅しようとしている。
本書は違う。最新の知見を押さえながらも、美術史を専攻したレティシアさんの美的感性を全面的に押し出し、西洋絵画からファッション写真に至るまで幅広いソースから収集されたヴィジュアル・イメージが、カードの図像の元型的な意味を共鳴させ、あぶりだす。そしてイメージに生命を吹き込む鮮烈なテキスト。これはドライな事典ではない。そう、これ自体が読み手の魂を動かす「作品」ではないか!
また、フランス生まれでありながら世界を旅する著者の感性は、従来のタロット研究にありがちな西欧中心主義を軽く乗り越えてゆく。次世代のタロティストとしてのひとつの理想形だろう。
そしてここにはタロットばかりではなく、伝統的な18世紀末以降の「占術カード」も豊富に扱われている。ただし、ニューエイジ・スピリチュアル系いわゆる「オラクルカード」は一切紹介されていない。あくまでもタロットと占いの「伝統」を尊重する姿勢の強さが伺えるのである。
ジェンダーや西欧中心主義といった古い枠を乗り越えつつも、タロットと占術カードの枠という伝統を固持する姿勢の絶妙なコンビネーションが、本書を際だたせている。
監訳作業の間、レティシアさんご本人に幾度となくご質問させていただいたが(本書のレトリカルな表現でしばしば疑問があった)都度、丁寧に、そしてユーモラスにご回答いただいた。そのお人柄にもファンになってしまったのである。
レティシアさんとって、本書はまだ2冊目の著書である。以前には“Jesus Now: Art + Pop Culture”という本を出しておられると聞く。
才能豊かな彼女のこと、さらなる活躍をされるに違いない。タロット界の新しい星のゆくえを、これからもずっとウォッチしていくつもりである。

[書き手]鏡リュウジ(心理占星術研究家・翻訳家)
[ヴィジュアル版]タロットと占術カードの世界:起源から21世紀まで / レティシア・バルビエ
[ヴィジュアル版]タロットと占術カードの世界:起源から21世紀まで
  • 著者:レティシア・バルビエ
  • 翻訳:鏡 リュウジ
  • 監修:鏡 リュウジ
  • 出版社:原書房
  • 装丁:単行本(408ページ)
  • 発売日:2022-03-18
  • ISBN-10:4562071567
  • ISBN-13:978-4562071562
内容紹介:
多様なデッキの稀少コレクションの図像からたどる、カードが象徴する知られざる意味、歴史的な位置づけまで。フルカラー図鑑。

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