内容紹介

『The Blue Zones 2nd Edition 世界の100歳人に学ぶ健康と長寿9つのルール』(祥伝社)

  • 2022/12/05
The Blue Zones 2nd Edition 世界の100歳人に学ぶ健康と長寿9つのルール / ダン・ビュイトナー
The Blue Zones 2nd Edition 世界の100歳人に学ぶ健康と長寿9つのルール
  • 著者:ダン・ビュイトナー
  • 翻訳:仙名紀
  • 出版社:祥伝社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(344ページ)
  • 発売日:2022-11-01
  • ISBN-10:4396617976
  • ISBN-13:978-4396617974
内容紹介:
「ニューヨーク・タイムズ」ベストセラー
5番目のブルーゾーンを初めて加えたフルバージョン
名著最新版、待望の邦訳
生き生きと輝く毎日を過ごしながら長生きするには、どうしたらいいのだろう。

そのヒントは「ブルーゾーン」に暮らす長寿者の生活にあると、ウェルネス研究の第一人者である琉球大学の荒川雅志教授は指摘する。

100歳を超えて長生きする人々──いわゆる「百歳人(センテナリアン)」たちは、何を食べ、どのような環境で、どんな生活習慣を持ち、何を大切にして暮らしているのか。


研究者で探検家であるダン・ビュイトナーは、雑誌「ナショナル・ジオグラフィック」とチームを組み、研究者たちをも巻き込んで、「長寿者」が多く暮らすエリア「ブルーゾーン」にそのヒントを探す旅に出る。そして健康長寿の秘密を探るルポルタージュを1冊の書籍『The Blue Zones(ブルーゾーン) 2nd Edition(セカンドエディション)』にまとめた。


この本にほれ込み監修・邦訳に携わった荒川雅志教授は、今の日本にこそこの本のメッセージが必要だと言う。それはなぜ? 「監修者の言葉」からお届けする。

 

寿命の75%はライフスタイルで決まる
世界の長寿エリア「ブルーゾーン」で見つけた共通点

日本の健康長寿は131カ国中60位


ただ長生きするのでなく、近年注目されるのが「健康寿命」である。健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」を示す。

ここに衝撃的数字がある。世界保健機関(WHO)が発表した2021年最新の統計によると、日本人の平均寿命は84.3歳で長寿世界一の座を守り続けている。しかしながら「健康寿命」を見ると、2015年度の世界疫病負担研究(Global Burden of Disease)では、平均寿命と健康寿命との差は9.3年で、調査が実施された世界131カ国中60位との報告もある。この数字を一人一人の人生に置き換えてみよう。意味することは明らかだ。

大切なのは長生きの中身、活き活きと輝く日々を過ごしながら長生きすること。長寿世界一を達成した日本の次なる課題として、生きがいある健康長寿をいかに達成するかが問われている。

そこで今の日本に届けたいのが、本書『ブルーゾーン』なのである。

 

今こそ再注目の〝つながり〟TSUNAGARI


人の長寿要因は「社会とのつながり」が最も重要な要素であることが研究報告されている。本書で紹介されるブルーゾーンの長寿者たちは共通して家族とのつながり、友人知人とのつながり、地域社会とのつながりが強固で、お互いに支え合うことが精神的にも安定をもたらし、ストレスを減らし、そして生きる気力となっていた。美しくも時に大災害をもたらす自然への畏敬の念と共生(自然とのつながり)、世代を超えて受け継いできたライフスタイル(先人の知恵とのつながり)、相互扶助、コミュニティ力(地域とのつながり)を大切にし、その結果、健康長寿を手に入れた。つながりが長寿の秘訣であることを医科学以前に身をもって実証した存在といえる。

我々にとって、生きるヒント、生き方のヒントとして、改めて〝つながり〟の大切さを教えてくれるブルーゾーンには、今こそ再び注目すべき価値がある。

 

ブルーゾーンとは何か?


イタリアのサルデーニャの長寿の村に関連して、ブルーゾーンという言葉を最初に作ったのが、サルデーニャの医師ジャンニ・ペスだ。国勢調査のデータを使って、彼はサルデーニャ島の孤立した地域を探し出し、そこに世界で最も百歳人の男性が集中していることを発見したのである。ベルギーの人口動態学者ミシェル・プーランがペスの発見を国際的に確認し、2004年、「Experimental Gerontology(実験老人医学)」誌に発表した。その後、本書著者のダン・ビュイトナーは、国際的な自然科学商業誌「ナショナル・ジオグラフィック」の取材でサルデーニャ島を訪れた。彼は、世界で最も長生きしている地域を特定することを目的としていた。ブルーゾーンという言葉に触発されたビュイトナーは、この言葉を日本の沖縄、アメリカ・カリフォルニア州のロマリンダ、コスタリカのニコジャ半島、ギリシャのイカリア島に広げ、ブルーゾーンを人口統計学的に確認された長寿の場所の国際的呼称として確立した。

本書は〝The Blue Zones, Second Edition: 9 Lessons for Living Longer From the People Who’ve Lived the Longest〟の邦訳である。この本の前に第1版が出版されているが、第1版では4つの長寿地域の紹介であった。新版である本書ではギリシャのイカリア島が新たに追加され、世界5大長寿地域がそろったバージョンとしてはじめて日本に紹介されるものである。

 

ブルーゾーン沖縄の今


本書でも取り上げられているブルーゾーンの一つ、日本の沖縄についても触れておこう。

2000年まで長寿日本一、イコール長寿世界一であった沖縄が、長寿から転落していることはよく知られる。が、実は75歳以上は依然として日本一をキープし、65歳以上の平均余命でも男性は第6位に甘んじるが女性は第1位であることはあまり報道されない。

沖縄のスローライフ、伝統文化、精神性、相互扶助社会はまだ健在の部分も多くある。慌ただしく時間に追われることのない「ウチナータイム」(沖縄時間)があり、日が昇れば活動し、日が落ちたら体を休めるというように、自然のリズムに逆らわない暮らしがここにはある。地域の伝統行事や模合(もあい)に象徴される会合は盛んで、強固なソーシャルネットワークに支えられ、ストレスが少なく長寿者は活き活きとしている。

 

今こそ気づかされることの多い一冊


私は福島県で生まれ、大学まで東京で過ごした。はじめて沖縄を訪れたのは27歳だった。この沖縄の旅は、次の生き方を模索する放浪の旅の途中でもあった。ところが、フェリーで上陸したその日から「イチャリバチョーデー」(一度会えばみな兄弟の意)で盛大に歓迎され、「ユイマール」(相互扶助の精神)に支えられ、気づけばそのまま移住、現在に至っている。今思うに、私自身がブルーゾーンへの旅で、人生が変わった一人でもあったのだ。

ダン・ビュイトナーとは、彼が2000年に沖縄の取材に入った際に、長寿村として知られた大宜味村(おおぎみそん)への取材に同行した。当時私は大学院医学研究科の博士課程生で、沖縄県庁が毎年100歳となった長寿者全員を調べるという健康疫学調査の分析を担当していた。百歳人1813名を分析した世界最大規模の超長寿者疫学研究のなかには、ビュイトナー氏が〝ブルーゾーンのシンボル〟と慕う当時104歳の奥島ウシおばあも含まれる。

この沖縄での疫学研究で医学博士号を取得した私だが、その後この研究からはしばらく離れ、近年は「ウェルネス」(輝く人生、自己実現)を研究のテーマにしている。

研究テーマであるウェルネスを伝えるため、私はたびたびこの〝The Blue Zones, Second Edition〟を参考図書として紹介してきた。

健康を身体の側面だけでなくより広義に捉えるこのウェルネス概念をどう説明するかに試行錯誤していたところ、ブルーゾーンに暮らす長寿者の知恵、そして、存在そのものが最良の教科書であることがふと頭の中で〝つながった〟。ただ長生きするのではない、「ブルーゾーン長寿者」は、「ウェルネス長寿者」なのだと。こうして巡り巡って今ふたたびブルーゾーンとつながることができたのである。

ただ長生きでなく、「よりよく生きる」ためのヒント、ポストコロナ時代に向けての「生き方」のヒント。一世紀を生き抜いた人々の健康と長寿のルールをまとめた本書にはその答えがある。

 

百歳人たちに共通する「健康と長寿9つのルール」


では最後に、本編から著者ダン・ビュイトナーのメッセージを紹介して、本稿を終えたいと思う。



「この本は、世界のブルーゾーンで暮らしている、百歳人たちから聞いた話をまとめたものだ。つまり、世界で最も健康的で、最長寿の人たちが、長生きして心豊かな暮らしをする秘訣を語る教訓集でもある。

もし長生きの知恵が、知識と体験の積み重ねによって形作られるものならば、これらの人々はだれよりも豊かな知恵を持ち合わせていると言える。

本書には、百歳人が人生をいかに巧みに生きてきたか、その洞察の記録が詰まっている。

彼らが語る物語は、子育てから人に好かれるコツ、豊かになる方法から愛を見つけてそれを保つやり方まで、人生で大切なことを教えてくれる。彼らの姿勢を教訓にして、私たちはそれぞれ自分のブルーゾーンを作ることができ、それによって長生きして豊かな生活を築く道を開くことが可能になるだろう。
 

デンマークの双子を研究した有名なデータをもとに科学が突き止めたところでは、長寿の要因のうち遺伝子に左右されるのはわずか25パーセントで、あとの75パーセントはライフスタイルや日常生活で選択する習慣に関わっているという。とすれば、もし私たちがライフスタイルを最適の状態に保つことができれば、生物的な限界のなかで最長の平均余命を満喫できるはずだ。


これまで7年あまり、私のチームは世界中を駆けめぐり、5つのブルーゾーンに何回も足を運び、それらの地域に住む百歳人たちにインタビューした。それぞれの地域で調べた結果、彼らが自称する年齢に偽りはなかった。私のチームは何十人もの百歳人に会い、地元の医師たちの協力を仰ぎ、それぞれの地域で独自のライフスタイル、習慣やしきたりを研究した。各ブルーゾーンに、ユニークな長寿の処方箋があった。そして、次第に分かってきたことだが、基本的な長寿の要因は共通している。私たちはそれを、本書の第7章で「健康と長寿9つのルール」にまとめた。


[ルール1] 適度な運動を続ける

[ルール2] 腹八分で摂取カロリーを抑える

[ルール3] 植物性食品を食べる

[ルール4] 適度に赤ワインを飲む

[ルール5] はっきりした目的意識を持つ

[ルール6] 人生をスローダウンする

[ルール7] 信仰心を持つ

[ルール8] 家族を最優先にする

[ルール9] 人とつながる

 
このルールは世界各地のブルーゾーンの文化に深く根ざしている。読者の方々もお気づきだと思うが、私たちは本当の「若返りの泉」を突き止めたいと考えているけれども、それは地上に湧き出てくるようなものではない。

私たちの現地ルポは、イタリア西岸沖の地中海に浮かぶ、小さな島から始まる」(ダン・ビュイトナー)



本書が、読者の健康と、長寿を手に入れる指南書となり、新しい生き方探しの一助となることを願っている。

※本稿は『The Blue Zones(ブルーゾーン) 2nd Edition(セカンドエディション)』の「監修者の言葉」と本編から抜粋編集した

[書き手]荒川雅志(国立大学法人琉球大学国際地域創造学部 ウェルネス研究分野 教授)
The Blue Zones 2nd Edition 世界の100歳人に学ぶ健康と長寿9つのルール / ダン・ビュイトナー
The Blue Zones 2nd Edition 世界の100歳人に学ぶ健康と長寿9つのルール
  • 著者:ダン・ビュイトナー
  • 翻訳:仙名紀
  • 出版社:祥伝社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(344ページ)
  • 発売日:2022-11-01
  • ISBN-10:4396617976
  • ISBN-13:978-4396617974
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