●仕事を辞めて地元に帰るべきだろうか……
●親と一緒に住んで介護すべきだろうか……
と、内心不安を抱えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか?
とはいえ、
▼今の家族との暮らしもある……
▼仕事を辞めたら生活が立ち行かない……
という方がほとんどでしょう。
では、親の介護で子にかかる負担が著しく増加する中、
親子共倒れにならず、今の暮らしを守りながら、
最善の介護をするには、どうしたらいいのか――?
その解決策の一つとして、今、クローズアップされているのが、
“遠距離介護”という選択肢です。
本稿では、“遠距離介護・実践中”の柴田理恵さんが、
自身の体験談を語りつつ、
「どうすれば離職せずに介護できるか?」
「遠距離&在宅の介護でどこまでできるか?」
「どこで施設の良悪を見分ければいいか?」
「介護保険はどう利用すればいいか?」etc.を
【遠距離介護の専門家】
【在宅介護・医療の専門家】
【介護のお金の専門家】に質問して、
わかりやすく教えてもらった書籍『遠距離介護の幸せなカタチ』より、
柴田さんの介護に対する思いのこもった「おわりに」の一部を、
抜粋して特別に紹介します。
もう「しんどくない介護のカタチ」を選んでもいい!
母の遠距離介護が始まってから、「柴田さんは、どんなふうに遠距離で介護をしているんですか?」とメディアなどで取材を受ける機会が増えました。と同時に、ネット記事のコメント欄などでは、「遠距離で介護なんて本当にできるんですか?」「それを介護とは言いません!」といったご指摘を受けることもありました。
要介護の親御さんと一緒に暮らし、仕事も辞めて日夜自分で介護をされている方からしたら、「遠距離介護なんて都合のいい話」と言われるのは無理もないことだと思います。
でも、だからこそ、富山と東京という離れた場所で、いろいろな方々の手をお借りしながら要介護の母を看ている実情を、包み隠さずにお話しすることで、わずかでもみなさんのお役に立てることがあるかもしれないと思い、この本のオファーを受けました。
親子の関係性というのは、一筋縄ではいかないものです。
愛もあれば、憎しみもある。
ただ、そのすべてをひっくるめて、親の人生の最後は自分の手で看てあげたいと思うもの。
しかし、その結果、介護の期間が長くなると、子どもの側が心身ともに折れてしまう。
こうして、日本の介護における困難な構造がこれまで続いてきてしまった……。
若い世代が減っていくこれからの時代に、いままで当然とされてきた価値観・やり方だけに則り、家族のみで親の介護を行なっていくことには、限界がきているのかもしれません。
今回、専門家の方々にお話を伺う中で、「自分の手で介護をすることが親孝行」「ギリギリまでは自分自身で親を看るべき」と頑張りすぎてしまうことが、時に介護する子ども自身を苦しくしてしまうことを感じました。
また、早くから地域包括支援センターに相談をし、ケアマネさんやヘルパーさん、訪問医の先生を頼ってチームを組んでいけば、子どもは自分の仕事や生活を犠牲にする必要がなくなり、親も子どもに依存せずにプロの介護を前向きに享受するようになる――。そんな介護のやり方も選べるのだと改めて気づきがありました。
そして、それはお金がないとできない方法ではなく、介護保険の制度をよく理解し、地域包括支援センターに相談して要介護認定を受けられれば、経済的な負担を減らしながらプロの助けを得られる、高額施設に入ることだけが介護ではないんだ、ということもよくわかりました。
私自身、仕事を辞め、親にぴったり寄り添って介護をしながら、親への最後の感謝を伝えたい、自分の手でやり切りたい。そういった気持ちはとてもわかります。
その一方で、「介護のプロでさえ、自分の親の介護はするな、と最初に習う」という本文中の言葉には、それだけ親子間での介護が難しい、という真実も詰まっていると思います。
介護に正解はない――。
だからこそ、この本がみなさんとみなさんの親御さんにとって、少しでも穏やかな介護が選べる一助になれば、これほど嬉しいことはありません。
【書き手】柴田理恵
本稿は『遠距離介護の幸せなカタチ――要介護の母を持つ私が専門家とたどり着いたみんなが笑顔になる方法』(祥伝社)の「おわりに」より抜粋のうえ作成