ズバリ「新しい政治小説」
星野智幸の作品をテーマ別に編集したアンソロジーが出た。全4巻。その最初の巻がこれだ。『在日ヲロシヤ人の悲劇』や『ファンタジスタ』といった、懐かしい作品が並ぶ。だが作品を読んで懐古的な気分に浸っている場合ではない。テーマは何か。ズバリ、「新しい政治小説」である。星野さんは小説家が書かなくなった「政治」にたった一人で向き合い、どうすれば現実の政治に小説の言葉で抗することができるかを考えてきたのだ。
これまで単行本未収録だった「先輩伝説」も魅力的だが、ぜひ「あとがき」を読まれたい。星野さんの書いてきた政治の全体像と、東日本大震災以後のその変容が、簡潔な言葉で語られている。