小説家・星野智幸さんの相撲エッセイ。なんというタイミングだろう! と思いながら読む。大相撲を眺め続け、貴乃花の引退とともにファン生活にピリオドを打った著者は、およそ10年のブランクを挟んで、相撲ファンへのカムバックを果たした。むろん、いまの大相撲をめぐる喧騒を予想していたわけではない。
だが、とりわけ第3章で批判的に論じられている諸テーマには耳を傾けるべきだ。無意識のモンゴル人力士叩きや、国技館での差別的ヤジなど、他の競技(たとえばサッカー)ならば顰蹙を買うはずの行為が、堂々とまかり通っている。心を痛めている相撲ファンも少なくないはず。相撲を愛する者にしか書けない珠玉の言葉。