漢詩の形をした日記収録
陳舜臣が亡くなったのは、2年前。晩年の仕事にこの本に収録されている「天空の詩人 李白」という連載があった。雑誌連載はしかし著者の病気によって中断され、完成をみなかった。李白の漢詩を一つひとつ取り上げ、解釈をし、短いが適切な批評を寄せる、そんな文章だ。
ただ今度この単行本を手にして一番驚いたのは、表題作と共に収められている「澄懐集」なる私家版の漢詩集だ。1986年にごくわずかな部数だけ刷られたらしい。漢詩の形をした日記である。
パリ郊外にあるバルビゾンを訪ねた。美しい風景が広がる。だが、観光客が多く、野外の食事は台無しになった。著者は「豈料野餐塵砂起/沿途沸溢觀光車」と記した。