そぎ落とされた詩の言葉
松本圭二のセレクションが刊行中だ。松本は詩人であり、小説を書き、映画についての犀利(さいり)な論考を発表してきた。セレクションは全部で9巻に及ぶが、第1詩集『ロング・リリイフ』、自伝的な要素をちりばめた小説『さらばボヘミヤン』、そして圧倒的な存在感を示した『詩篇アマータイム』が3冊同時発売された。
やはり『ロング・リリイフ』が忘れがたい。極端にそぎ落とされた詩の言葉はしかし、読者を少しも拒むことなく、その固有の世界を作っていた。
松本は書いている。その詩集は「一回きりの跳躍」だった、と。長く入手困難だった、老成や成熟と無縁な詩人の仕事が、また読めることが何より嬉しい。