後書き

『ブックセラーズ・ダイアリー2:スコットランドの古書店の日々ふたたび』(原書房)

  • 2025/02/19
ブックセラーズ・ダイアリー2:スコットランドの古書店の日々ふたたび / ショーン・バイセル
ブックセラーズ・ダイアリー2:スコットランドの古書店の日々ふたたび
  • 著者:ショーン・バイセル
  • 翻訳:阿部 将大
  • 出版社:原書房
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(360ページ)
  • 発売日:2024-12-16
  • ISBN-10:4562074884
  • ISBN-13:978-4562074884
内容紹介:
世界的ベストセラー 待望の第2弾!スコットランド最大の古書店にふたたび変てこな客たちが戻ってくる! 偏屈な店主のぼやきは今日も止まらないスコットランドで「本の町」として知られるウ… もっと読む
世界的ベストセラー 待望の第2弾!
スコットランド最大の古書店にふたたび変てこな客たちが戻ってくる! 偏屈な店主のぼやきは今日も止まらない

スコットランドで「本の町」として知られるウィグタウン。そこで偏屈な店主が営む古書店にやってくるのもまた、変てこな客ばかり。ひょんなことから雇うことになった口の悪いイタリア人スタッフもまた、店主に引けを取らない変わり者。もしかしたらこの町は変わり者と相性がいいのかもしれない。

腰痛との闘い、終わらない在庫整理、天敵Amazonへのうらみつらみ、そして秋のブックフェスティバルの大騒動――古書店主のぼやきと日常は今日も続く。

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〈本書に寄せられた賛辞〉
あのコメディアンのリッキー・ジャーヴェイスが本屋を経営していたらまさにこんなふうに毒を吐きそうだ。
――ウォール・ストリート・ジャーナル紙

本書の魅力は、著者が店の黒板に走り書きしたこんな言葉によく表れている。
『人づきあいをやめよう。いつも本をたずさえよう』
――ワシントンポスト紙

温かく、ウィットに富んでいて、大笑いするほど面白い!
――デイリー・メール紙

これまで読んだ書店員の回想録の中で、最も苛烈で愉快だ。
――ニューヨーク・タイムズ紙
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ひょんなことから雇い入れた新しい店員や、別れたパートナーへの想い、天敵アマゾンやキンドルへのうらみつらみ――古書店主のぼやきと日常は今日も続く。世界的ベストセラー『ブックセラーズ・ダイアリー』待望の第2弾!
スコットランドの田舎町ウィグタウン。1991年に「本の町」として新たなスタートを切ったこの町がどれだけ田舎かというと、「道の真ん中に乗り捨てられた車があっても通報されることなく、数日にわたって人々が環状交差点のようにその周囲を迂回して走り続ける」くらい。とにかくのどかで、のんびりした住民が多い。そんなウィグタウンで、「本を買おうと思ったら、うっかり本屋を買ってしまった」という男ショーン・バイセルが営む古書店には、店主に負けず劣らず、風変わりな客たちが集ってくる。

そんな古書店の日常を店主ショーン・バイセルが毒のあるユーモアたっぷりに日記正式で綴った『ブックセラーズ・ダイアリー』は本好きたちの心をすっかり虜にして、世界的ベストセラーに。しかし、その後も彼のぼやきはとどまることを知らない。腰痛との闘い、終わらない在庫整理、天敵Amazonへのうらみつらみなど、さらなるぼやきを綴った続篇『ブックセラーズ・ダイアリー2』より、訳者あとがきを抜粋して紹介する。

偏屈な古書店主のぼやきは今日も止まらない

本書は、スコットランドに住むショーン・バイセルが自ら経営する古書店での日常を日記の形で記した『Confessions of a Bookseller』の全訳である。『ブックセラーズ・ダイアリー』(矢倉尚子訳、白水社、2021年)の続編にあたり、主として2014年の出来事をつづった前作に続き、本作では2015年の日常が記されている。この日記シリーズは第3弾まで出ていて、カズオ・イシグロの『日の名残り(原題The Remains of the Day)』をもじったタイトルの『Remainders of the Day』が2022年(日記の内容は2016年を中心としている)に刊行されている。

前作をお読みの方はご存じだろうが、バイセルは2001年、30歳のときに故郷ウィグタウンの古本屋を衝動買いし、その「ザ・ブックショップ」は、蔵書10万冊のスコットランド最大の古書店として有名になった。バイセルが主催者の一人としてかかわっているウィグタウン・ブックフェスティバルも大人気イベントとなり、この町の復興に大きく貢献している。

その古書店での日常をつづった日記シリーズの第2作が本書で、前作でおなじみの人物も再登場する。店になくてはならないスタッフのニッキー、(残念ながら本書で別れてしまうことになるが)パートナーのアンナ、いつも不機嫌な夏期臨時バイトのフロー、これまた不機嫌を絵に描いたような郵便局長のウィリアム、ウィグタウン・ブックフェスティバルのアーティスティック・ディレクターで風呂好きのエリオット、杖作りの名人でスコットランド一の入墨男を自称するサンディ、巨大な飼いネコのキャプテンなどなど……。そして本作では、夏に店の臨時ボランティアとしてイタリア人女性のエマヌエラ(いつも体の不調を訴え、身体年齢85歳ということで「グラニー(おばあさん)」のあだ名で呼ばれることになる)が加わり、新しいいろどりを添えてくれる。前作を読んだ読者はなつかしい人々と再会できる一方、ストーリーのない日記形式なので、前作を未読の方でも十分楽しめる本になっている。

バイセルの周囲の魅力的な人物以外にも、本書にはいくつも読みどころがある。まず、古書店ならではの本にまつわるこぼれ話が満載だ。古書店での買取業務はもちろん、本ができあがるまでの製本過程や蔵書票の魅力、パンブックスのロゴを考案したマーヴィン・ピーク(ファンタジー『ゴーメンガースト』3部作の作者として有名)が、グレアム・グリーンの助言に従ったために巨額の金をもうけそこなった話、古書店が揃えておくべき本の種類(その中には村上春樹も入っている)などについて語られ、本好きの読者を喜ばせてくれる。

古書店主らしく読書家のショーンは、日記の中で多くの本に言及しており、これは一種の読書案内の役割も果たしてくれる。ウィリアム・ボイドの『新たな告白』(残念ながら未訳作品)については数回にわたって引用してあらすじを紹介してくれるし、ナサニエル・ウェストの『孤独な娘』、ミハイル・ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』、マーティン・エイミスの『時の矢』、ジェローム・K・ジェロームの『ボートの三人男』など、いわゆる文学史の正統からはちょっとはずれた異色の小説が並んでいるところには、ショーンのひねくれた性格がかいま見える気がする。

変わった人たちが集まるスコットランド「本の町」

舞台となるウィグタウンという町自体も魅力的だ。道の真ん中に乗り捨てられた車があっても通報されることなく、数日にわたって人々が環状交差点のようにその周囲を迂回して走り続けるようなのどかな町ではあるが、驚くほど多様な人々が住んでいる。他のヨーロッパ諸国はもちろん、台湾やニュージーランド、オーストラリアといった各国から人々が集まり、排除されることなく暮らしているのだ。保守的な偏狭さにとらわれることのない田舎町で展開される人間模様は、短編小説の一部を切り取ってきたかのような印象を与える。

そして忘れてならないのが、前作でも一番の読みどころと言ってよかった古書店を訪れるちょっと変わった客の面々。値切ることを当然と考える客や、そもそも買う気がまったくないのに本の情報だけを得ようと調べていく客などの様子がユーモアと皮肉をこめてつづられるが、特に印象的なのが、一言も言葉を発することなく店をモグラのごとくうろつき、人づきあいの能力を犠牲にしてすべてを読書に捧げている「モグラ男」だ。迷惑でありながらどこかにくめないこれらの客の描写には思わず笑ってしまう。

各月の冒頭では、オーガスタス・ミュアの『古本屋ジョン・バクスターの秘められたる想い』という日記形式の書籍からの一節が引用され、それについてバイセルが現代の古書店の視点からコメントを寄せている。前作でもお決まりのネタだったアマゾンやキンドルへのうらみつらみは本作でも頻出するが、バイセルはただ文句を垂れ流すばかりでなく、店を存続させるべく努力し、他の店のよい試みを取り入れようといつも気を配っている。月1回、会員にランダムに本を送る「ランダム・ブッククラブ」や、フェイスブック映えする写真や動画の投稿はその一環だ。古書店、新刊書店を問わず、書店が厳しい状況に置かれていることは日本も変わりなく、政府も書店振興プロジェクトを打ち出して対策に乗り出していることは周知のとおりである。バイセルは、厳しい世相のなかで書店を続けていくには、ネットでは不可能な「体験」を提供するしかないという見解を述べているが、彼のさまざまな工夫や提言は、書店の減少が止まらない日本においてもおおいに参考になるのではないだろうか。本書を読んで、もっと本を読みたい、そして書店に足を運んでみたいと思う読者が一人でも増えてくれたら、訳者としてこれほどうれしいことはない。

[書き手]阿部将大(訳者)
ブックセラーズ・ダイアリー2:スコットランドの古書店の日々ふたたび / ショーン・バイセル
ブックセラーズ・ダイアリー2:スコットランドの古書店の日々ふたたび
  • 著者:ショーン・バイセル
  • 翻訳:阿部 将大
  • 出版社:原書房
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(360ページ)
  • 発売日:2024-12-16
  • ISBN-10:4562074884
  • ISBN-13:978-4562074884
内容紹介:
世界的ベストセラー 待望の第2弾!スコットランド最大の古書店にふたたび変てこな客たちが戻ってくる! 偏屈な店主のぼやきは今日も止まらないスコットランドで「本の町」として知られるウ… もっと読む
世界的ベストセラー 待望の第2弾!
スコットランド最大の古書店にふたたび変てこな客たちが戻ってくる! 偏屈な店主のぼやきは今日も止まらない

スコットランドで「本の町」として知られるウィグタウン。そこで偏屈な店主が営む古書店にやってくるのもまた、変てこな客ばかり。ひょんなことから雇うことになった口の悪いイタリア人スタッフもまた、店主に引けを取らない変わり者。もしかしたらこの町は変わり者と相性がいいのかもしれない。

腰痛との闘い、終わらない在庫整理、天敵Amazonへのうらみつらみ、そして秋のブックフェスティバルの大騒動――古書店主のぼやきと日常は今日も続く。

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〈本書に寄せられた賛辞〉
あのコメディアンのリッキー・ジャーヴェイスが本屋を経営していたらまさにこんなふうに毒を吐きそうだ。
――ウォール・ストリート・ジャーナル紙

本書の魅力は、著者が店の黒板に走り書きしたこんな言葉によく表れている。
『人づきあいをやめよう。いつも本をたずさえよう』
――ワシントンポスト紙

温かく、ウィットに富んでいて、大笑いするほど面白い!
――デイリー・メール紙

これまで読んだ書店員の回想録の中で、最も苛烈で愉快だ。
――ニューヨーク・タイムズ紙
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