後書き

『建築探偵、本を伐る』(晶文社)

  • 2025/04/25
建築探偵、本を伐る / 藤森 照信
建築探偵、本を伐る
  • 著者:藤森 照信
  • 出版社:晶文社
  • 装丁:単行本(313ページ)
  • 発売日:2001-02-10
  • ISBN-10:4794964765
  • ISBN-13:978-4794964762
内容紹介:
本の山に分け入る。自然科学の眼は、ドウス昌代、かわぐちかいじ、杉浦康平、末井昭、秋野不矩…をどう見つめるのだろうか。東大教授にして路上観察家が描く読書をめぐる冒険譚。

あとがき

自分が本を読んだり書いたりするようなナンジャクな人間になるとは思わなかったし、書評をし、それを一冊にまとめるようになるなんてもっと思わなかった。

書評をするようになったのは、『週刊朝日』に建築探偵モノを数年間連載したのが縁で、連載終了後、書評ページへの参加を言われた。丸谷才一、秋山駿さんなどが書評を担当しており、プロの文学者をこわいもの見たさで参加したのだった。

二週に一ぺん、銀座のマキシムなどに集まり、ずらり並べられたその間の全新刊書から好きなだけ取り、後は楽しく飲食談笑して車で帰る。一度なんか、閉店後の八重洲ブックセンターで会が開かれ、地下から最上階まで歩いて、自分の欲しいのを自由に抜いたこともある。

今はもう考えられないぜいたくな書評の会を体験したのだが、伊東光晴さんが言うに、「昔はこんなもんじゃなかった、もっとすごかった」。

『週刊朝日』の書評の会は心に残るところがあり、その後もメンバーは集まり、楽しく飲食談笑する。ただし自前で。

『週刊朝日』が書評メンバー制をやめた後、一、二年してから、毎日新聞の書評欄への執筆を頼まれ、これは進んで引き受けた。生来、本や活字よりは絵や図、絵や図よりは土や木や石のほうが体質に合っており、『週刊朝日』をやめた後、どんどん本から遠ざかり、これはまずいと思っていたからだ。

毎日新聞の書評は今も続けているが、取り上げるのは、暗い大学時代にワラのように把んでからくも浮くことのできた恩ある文学ではなくて、絵や図や土や木や石に近いもの、その延長で入ってゆけるものが多い。そういうズレた方面への目配りが、私の書評の特徴と言えば言えるかもしれない。

編集者の中川六平さんが、突然やってきて、あなたに関心あるといい、この本が出来たのだった。

【この後書きが収録されている書籍】
建築探偵、本を伐る / 藤森 照信
建築探偵、本を伐る
  • 著者:藤森 照信
  • 出版社:晶文社
  • 装丁:単行本(313ページ)
  • 発売日:2001-02-10
  • ISBN-10:4794964765
  • ISBN-13:978-4794964762
内容紹介:
本の山に分け入る。自然科学の眼は、ドウス昌代、かわぐちかいじ、杉浦康平、末井昭、秋野不矩…をどう見つめるのだろうか。東大教授にして路上観察家が描く読書をめぐる冒険譚。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

建築探偵、本を伐る / 藤森 照信
建築探偵、本を伐る
  • 著者:藤森 照信
  • 出版社:晶文社
  • 装丁:単行本(313ページ)
  • 発売日:2001-02-10
  • ISBN-10:4794964765
  • ISBN-13:978-4794964762
内容紹介:
本の山に分け入る。自然科学の眼は、ドウス昌代、かわぐちかいじ、杉浦康平、末井昭、秋野不矩…をどう見つめるのだろうか。東大教授にして路上観察家が描く読書をめぐる冒険譚。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

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