書評
『人にはどれほどの本がいるか』(朝日新聞出版)
本好きによる本好きのためのような小説集。表題作は、小倉で高級旅館を営むかたわら、本を集め、本を読み、本について友人と語らった男の生涯を描く。毎朝、九官鳥のためにトルストイの箴言(しんげん)集『文読む月日』を読み聞かせ、最後は中村真一郎の直筆原稿や漱石の掛け軸を紙子羽織にして棺に入るような男である。
蔵書論議の場面に、「読書家としての私と蔵書家としての私は違うんだな。そして、私はずっと愛書家になりたかったんだ」という言葉もある。共感する読者は多いだろう。
物語のあちこちに、さまざまな書物や作家の名前が出てきて、本好きの心をくすぐる。ハイライトは晩年の蔵書整理。求人広告を見てやってきた19歳の少女は、面接の最後、「私、テレーゼのようにはならないので」と告げる。求人広告がエリアス・カネッティの『眩暈(めまい)』のパロディーだと気づいたことを、さりげなく伝えたというのだ。
表題作のほか、辞書の間違い探しを競う「完壁な辞書」(「壁」は著者の意図によるものという編集部注がある)、聖書には猫が登場しないというので猫のための聖書を書く「猫にバイブル」の2篇。
蔵書論議の場面に、「読書家としての私と蔵書家としての私は違うんだな。そして、私はずっと愛書家になりたかったんだ」という言葉もある。共感する読者は多いだろう。
物語のあちこちに、さまざまな書物や作家の名前が出てきて、本好きの心をくすぐる。ハイライトは晩年の蔵書整理。求人広告を見てやってきた19歳の少女は、面接の最後、「私、テレーゼのようにはならないので」と告げる。求人広告がエリアス・カネッティの『眩暈(めまい)』のパロディーだと気づいたことを、さりげなく伝えたというのだ。
表題作のほか、辞書の間違い探しを競う「完壁な辞書」(「壁」は著者の意図によるものという編集部注がある)、聖書には猫が登場しないというので猫のための聖書を書く「猫にバイブル」の2篇。
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