書評

『そばかすのフィギュア』(早川書房)

  • 2017/08/09
そばかすのフィギュア / 菅 浩江
そばかすのフィギュア
  • 著者:菅 浩江
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:文庫(329ページ)
  • 発売日:2007-09-21
  • ISBN:4150309027
内容紹介:
新作アニメ「ダグリアンサーガ」のキャラコンテストで最優秀賞を受賞した靖子。彼女のもとに送られてきた村娘アーダのフィギュアは、最新テクノロジーで自在に動き、設定に応じた感情まで持っていたが…。少女とフィギュアの優しく切ない交流を描き星雲賞を受賞した表題作、高校在学中に発表されたデビュー作「ブルー・フライト」、文庫初収録のファンタジイ「月かげの古謡」など、初期傑作8篇を収録した待望の作品集。

模型の新しい心

ワンフェス(ワンダーフェスティバル)は、模型版のコミケ(コミックマーケット)とも言うべきオタクの祭典。同じファン創作物でも、2次元の同人誌に対してこっちは3次元。ガレージキットと呼ばれる少数生産の模型が売買される。現在は海洋堂の主催で夏と冬に開かれ、5万人を超える来場者を集めるまでに成長した。

日本が世界に誇るこの模型文化を背景にした先駆的な名作が、菅浩江『そばかすのフィギュア』。SFマガジン1992年8月号に発表され、翌年の星雲賞日本短編部門を受賞。99年には、デイナ・ルイスとスティーヴン・バクスターの共訳で、英国のSF誌インターゾーンの3月号に英訳掲載。翌年には、デイヴィッド・ハートウェル編の年刊SF傑作選に(非英語圏からの翻訳作品としては唯一)選ばれ、海外でも評価される作品であることを証明した。

主人公は大学生の宮田靖子。所属する同人誌サークルの仲間と一緒に、新作アニメ「ダグリアンサーガ」のキャラクターデザインコンテストに応募したところ、みごと最優秀賞を受賞。彼女のデザインをもとにつくられた発売前のガレージキットが送られてくる。4体のうち、村娘アーダの組み立てを任された靖子は、初めての経験に悪戦苦闘しながら、愛情を込めてサンドペーパーをかけ、塗装し、作業を進めてゆく。そのフィギュアは、新開発の植物繊維が神経の役割を果たし、自在に動くだけでなく、シナリオに応じた性格と発話機能まで備えていた……。

というわけでこれは、模型オタクの生態をリアルに描く青春小説であると同時に、靖子とアーダの交流を軸にした風変わりなロボット(人工知性)SFであり、せつないラブストーリーでもある。山本弘『アイの物語』や長谷敏司『BEATLESS』のさきがけと言えなくもない。同名の短編集(ハヤカワ文庫JA)には、本編のほか、著者が高校生のときに発表したデビュー作「ブルー・フライト」や、宇宙船の中で女性型ロボットと暮らす少女を描く「雨の檻(おり)」など、全8編を収録する。
そばかすのフィギュア / 菅 浩江
そばかすのフィギュア
  • 著者:菅 浩江
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:文庫(329ページ)
  • 発売日:2007-09-21
  • ISBN:4150309027
内容紹介:
新作アニメ「ダグリアンサーガ」のキャラコンテストで最優秀賞を受賞した靖子。彼女のもとに送られてきた村娘アーダのフィギュアは、最新テクノロジーで自在に動き、設定に応じた感情まで持っていたが…。少女とフィギュアの優しく切ない交流を描き星雲賞を受賞した表題作、高校在学中に発表されたデビュー作「ブルー・フライト」、文庫初収録のファンタジイ「月かげの古謡」など、初期傑作8篇を収録した待望の作品集。

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初出メディア

西日本新聞

西日本新聞 2015年8月5日

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