旦那の意見
- 著者:山口 瞳
- 出版社:中央公論社
- 装丁:-(254ページ)
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Yという兵隊がいた。これは箸にも棒にもかからぬ奴だった。どういうわけか演習に出たことがない。学科の時に手をあげたことがない。(中略)彼はまた、夜になると、しばしば脱柵し、女子青年団員を、片っ端からヤッツケテクルのだった。朝帰りしてきた彼は、古年次兵を相手に、娘の抵抗がどのようなものであったか、どうやって組み伏せたか、どんな具合に娘がヨクナッテイッタカを実演してみせてくれた。私は、同じ初年兵である彼が、どんな手段でもってそういう立場を獲得できたのかということが、まるでわからなかった。まるきり、見当がつかない。とにかく、そういう男がいるのだと思うより仕方がない。一種の怪物だった
衆院選に初当選した時の写真が掲載されているが、目のあたりといい、口もとといい、そのチョビ髭さえも私の父とあまりにもよく似ているので、その頁では大笑いを禁じ得なかった。これが、明治の半ばから大正の初めにかけて生まれた、一旗組の少壮実業家の顔である
川端さんは私を叱ったり説教したりするのではない。そんなことは一度もなかった。そうではなくて黙っておられるのである
女の人が文章を書くと、肝腎(かんじん)なことはちっとも書かない。教えてくれない。織田昭子さんが、織田作之助と、いつどこで結ばれたのか。「足かけ四年半」の間に、織田作之助は他の女性と結婚し、別れるが、それがどんな女性で、何故そんなことになったのか。その間に、彼女は別府へ行くが、それは何故か。そういうことが、さっぱりわからない