コラム
松原隆一郎「2017この3冊」毎日新聞|『富国と強兵』中野剛志『平家物語』古川日出男『時がつくる建築』加藤耕一
2017 この3冊
〈1〉『富国と強兵』中野剛志著(東洋経済新報社・3888円)
〈2〉『平家物語』古川日出男訳(河出書房新社・3780円)
〈3〉『時がつくる建築』加藤耕一著(東京大学出版会・3888円)
反グローバリズムの嵐が今年も吹き荒れた。人類の劣化と見えるかもしれないが、〈1〉はむしろそれが「地政経済学」の現実であることを「信用貨幣論」から解き明かす。中国の進出や北朝鮮の暴走は国家の行動として理解するしかないであろう。
「琵琶法師による語り物」という視点から新訳を試みた〈2〉によってへ平安末期の政治と源平合戦がぐっと身近になった。それにしても、源頼朝の平家掃討は、ジェノサイドと呼ぶべき血腥さと徹底ぶり。諸行無常の非情さがあったからこそ救われるために仏教が必要とされたと痛感する。
スクラップ・アンド・ビルドは建築に対するジェノサイドであろう。〈3〉は西欧建築史から、「使い捨て」が近代的で一段高い価値があり、補修・再利用(リノベーション)が前近代といっ先入観を覆す。廃棄による刷新は日本の伝統なのだろうか。
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