読書日記
森伸之『女子校制服手帖』(河出書房新社)、辛酸なめ子『女子校育ち』(筑摩書房)、三浦しをん『ののはな通信』(KADOKAWA)
女子校独特の魅力
〔1〕森伸之『女子校制服手帖』(河出書房新社・1,944円)の帯には「制服研究歴40年の著者」とあります。1985年に刊行された著者初の制服本『東京女子高制服図鑑』から愛読している私もまた、制服愛好歴がずいぶん長くなったものよ…。と『図鑑』を見返すと、当時の女子高生のイラストは、髪形が聖子ちゃん風だったり、ジャンパースカート採用率が今よりずっと高かったりと、女子高生と制服とが、いかに変化してきたかを実感します。『手帖』においては、そんな中でも伝統を守り続けるクラシックな制服の数々が紹介され、濃縮された制服の可愛(かわい)さを堪能することができるのでした。
男女の差異が減る今、女子だけの学校の存在価値が問われつつありますが、それでも女子校には、独特の魅力があるもの。そんな独特さの表と裏とを解き明かしたのが、〔2〕辛酸なめ子『女子校育ち』(ちくまプリマー新書・842円)です。
女子校の分類から始まり、その特性や培われがちな気質をあますところなく探ることができるのは、自身も女子校出身の著者だからこそ。異性の視線にとらわれることなく、個性を暴発させることができる女子校という世界に、人生の一時期、どっぷりと浸ってみるのも、悪くないかも……。
〔3〕三浦しをん『ののはな通信』(KADOKAWA・1,728円)は、横浜のミッション系名門女子校に通う二人の少女の手紙のやりとりから始まる物語です。正反対の個性を持つ二人は親友となり、やがて友人という垣根を越えるように。
女同士で恋心を抱くことは、女子校ではしばしば見られる現象です。ではそんな恋心の終着点は、どこにあるのか。やはり女子校出身の著者は、20年にわたる往復書簡という形式で、「その先」を追いました。
女しかいない女子校は均質化された世界ではなく、細かな差異が残酷なまでに浮かび上がる場所です。そんな差異は、女子校という守られた場所から飛び出した後にますます際立っていくわけで、そのせいで、いくら女子校時代に「私たち、ずっと一緒」と思っていても、やがて生き方はばらばらに。
しかし時が経(た)てば、彼女たちは互いの差異を認め合うことができるようになるのでした。女の生き方は、ステレオタイプな型に押し込めることができるものではない。人生の中で、より良く「違い」、より遠くへとはぜていくために、若い一時期に同性だけで同じ制服を着て過ごす場所が、女子校なのかもしれません。
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