帯にはこう書かれている。
<もう国や政府に頼れないので、目に見えない存在に救いを求めることにしました!>
そうだよな。いまだ医療機関や福祉施設にすら十分なマスクを供給できない、こんな国だもの(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆年は2020年)。
『スピリチュアル系のトリセツ』(平凡社・1650円)は漫画家でコラムニスト、辛酸なめ子の体験的エッセイ。出版社のウェブに連載中から話題になっていた。
スピリチュアル系とは、占いに凝ったり、心霊現象や前世を信じたり、陰謀論を語ったりする人びとのこと。著者は彼らを「スピ度レベル」によって分類し、イラストをつけて図鑑化している。あの世界が、こんなにも多種多様だったとは!
ちなみにレベル1はパワーストーンや手相、風水など、わりと身近でも遭遇するもの。レベル2には死者との交流や異次元のパワーで体を浄化するスピリチュアル健康法などがある。最も高いレベル4になると、地球人を救うために他の惑星から生まれてきたライトワーカーや宇宙人がいる(ただし、どちらも自称)。
あらためて書店を観察すると、「精神世界」の売り場はけっこうな人気で、立ち読みする人の姿が途切れない。スピリチュアル系の本は山ほど出ているが、本書はそれらと一線を画する。というのも、著者はスピリチュアル系に対して独特のスタンスを貫いているのだ。一応、スピリチュアル系を信じているらしいのだが、抱いた違和感を歯に衣(きぬ)着せずに記している。
たとえば「超次元・超時空間松果体覚醒医学」を提唱するドクターのトークイベントについて、<こういった講演で恩恵を受けるには、できるだけ疑念を持たず、とりあえず信じるのがポイントです>。ドクターが連発する「DNA」という言葉には<スピリチュアル的に高揚するだけでなく中二心も盛り上がるワードです>と注釈する。ちなみに「中二心」とは中学二年生並みの精神年齢を指す。
褒めてんだか貶(けな)してるんだか……。なんて巧妙な批評だろう。