書評

『ヴィクトル・ユゴーと降霊術』(水声社)

  • 2020/02/27
ヴィクトル・ユゴーと降霊術 / 稲垣 直樹
ヴィクトル・ユゴーと降霊術
  • 著者:稲垣 直樹
  • 出版社:水声社
  • 装丁:単行本(256ページ)
  • 発売日:1993-04-00
  • ISBN-10:4891762837
  • ISBN-13:978-4891762834
内容紹介:
1853年9月、英仏海峡の孤島ジャージー島。ナポレオン3世の迫害を逃れて亡命中のユゴー邸に、死んだ長女の霊が現れた。深く心を動かされた家族とその友人たちは、以後、連日のように、との交信に没頭する。2年後に、参加者のひとりの発狂によって幕を閉じることになる。この隠されつづけてきたユゴーの降霊会の様相を具体的に再現しながら、ユゴーの文学創造(ひいては文学創造一般)と降霊術との深くかつ根本的な関係を、オカルティズム、スピリチュアリズムの猖獗という時代的文脈とともに鮮やかに描きだした異色の書き下ろし評論。
オカルティズムと機械文明は奇妙なところで接点をもっている。十九世紀の半ば、アルファベットを叩(こう)音で表記するモールス信号が発明されると、この原理を応用した霊界通信、つまりテーブルが霊媒に反応して勝手に足を鳴らす、「こっくりさん」が流行した。

流行はアメリカからヨーロッパに飛び火し、英仏海峡の孤島で亡命生活を送るヴィクトル・ユゴーの元にも伝わった。最初懐疑的だったユゴーは次第に降霊術にのめり込み、長男シャルルを霊媒として、歴史上の偉人や、「劇」「小説」といった、様々な抽象観念を呼び出して対話を重ねた。

著者は、残された記録からユゴーの降霊術の有り様を実証的に検証し、霊との対話が、じつは、ユゴーとユゴーの無意識との対話であったことを証明する。とりわけ、降霊術の途中でユゴーが、「劇」の語る内容が、自分自身の詩と類似していることに気付き、驚くが、やがて「ゴースト」ライターの命ずるままに詩を書くようになっていく部分がおもしろい。

【この書評が収録されている書籍】
歴史の風 書物の帆  / 鹿島 茂
歴史の風 書物の帆
  • 著者:鹿島 茂
  • 出版社:小学館
  • 装丁:文庫(368ページ)
  • 発売日:2009-06-05
  • ISBN-10:4094084010
  • ISBN-13:978-4094084016
内容紹介:
作家、仏文学者、大学教授と多彩な顔を持ち、稀代の古書コレクターとしても名高い著者による、「読むこと」への愛に満ちた書評集。全七章は「好奇心全開、文化史の競演」「至福の瞬間、伝記・自伝・旅行記」「パリのアウラ」他、各ジャンルごとに構成され、専門分野であるフランス関連書籍はもとより、歴史、哲学、文化など、多岐にわたる分野を自在に横断、読書の美味を味わい尽くす。圧倒的な知の埋蔵量を感じさせながらも、ユーモアあふれる達意の文章で綴られた読書人待望の一冊。文庫版特別企画として巻末にインタビュー「おたくの穴」を収録した。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

ヴィクトル・ユゴーと降霊術 / 稲垣 直樹
ヴィクトル・ユゴーと降霊術
  • 著者:稲垣 直樹
  • 出版社:水声社
  • 装丁:単行本(256ページ)
  • 発売日:1993-04-00
  • ISBN-10:4891762837
  • ISBN-13:978-4891762834
内容紹介:
1853年9月、英仏海峡の孤島ジャージー島。ナポレオン3世の迫害を逃れて亡命中のユゴー邸に、死んだ長女の霊が現れた。深く心を動かされた家族とその友人たちは、以後、連日のように、との交信に没頭する。2年後に、参加者のひとりの発狂によって幕を閉じることになる。この隠されつづけてきたユゴーの降霊会の様相を具体的に再現しながら、ユゴーの文学創造(ひいては文学創造一般)と降霊術との深くかつ根本的な関係を、オカルティズム、スピリチュアリズムの猖獗という時代的文脈とともに鮮やかに描きだした異色の書き下ろし評論。

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毎日新聞 1993年8月2日

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