コラム
本村 凌二「2024年 この3冊」毎日新聞|イェルク・リュプケ『パンテオン 新たな古代ローマ宗教史』(東京大学出版会)、持田明子、大野一道『ジョルジュ・サンドセレクション 別巻』(藤原書店)、大月康弘『ヨーロッパ史 拡大と統合の力学』(岩波書店)
2024年「この3冊」
<1>『パンテオン 新たな古代ローマ宗教史』イェルク・リュプケ著(東京大学出版会)
<2>『ジョルジュ・サンドセレクション 別巻』持田明子、大野一道編(藤原書店)
<3>『ヨーロッパ史 拡大と統合の力学』大月康弘著(岩波書店)
<1>注目は「生きられた宗教」というテーマ。エリートや皇帝ではなく、ローマ市民・庶民が生活経験する宗教とはどうであったのか。その宗教実践と経験は色彩に富んでおり、新しい宗教史の試みになる。重厚な大作であるが、読書後の充実感がある。
<2>19世紀フランスの作家。おびただしい書簡のために、その交友関係は華々しいばかりだ。なによりも愛の交流であり、「束縛されない愛」が大切であった。ドストエフスキーに愛読され、プルースト文学の始まりにもなったという。
<3>狭義のヨーロッパは西欧として理解されるが、著者は東欧にあったビザンツ社会の研究者。西欧近代社会への新たな視角があざやかになる。福田徳三、三浦新七、上原専禄、増田四郎にさかのぼる一橋学派のマクロ史学の伝統が目に浮かぶ。
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