書評

『岩佐美代子の眼―古典はこんなにおもしろい』(笠間書院)

  • 2017/11/01
岩佐美代子の眼―古典はこんなにおもしろい / 岩田 ななつ
岩佐美代子の眼―古典はこんなにおもしろい
  • 著者:岩田 ななつ
  • 出版社:笠間書院
  • 装丁:単行本(281ページ)
  • ISBN-10:4305704978
  • ISBN-13:978-4305704979
内容紹介:
国文学者、岩佐美代子のインタビュー。四歳より十三年間昭和天皇第一皇女照宮成子内親王のお相手を勤めた氏の文学研究の秘密を探る。

文学に打ち込んだ“最後の女房”

岩佐美代子は、異色の経歴を持つ国文学者です。民法学者で男爵であった穂積重遠の娘として大正15年に生まれ、女子学習院で学ぶ間は、昭和天皇第一皇女照宮(てるのみや)成子(しげこ)内親王のお相手役を務め、結婚後に独学で学問の道を歩んだ末に、大学教授となった方。本書は、そんな岩佐美代子のライフヒストリーを聞き書きしてまとめた作品です。

彼女の人生は、平安・中世における女房のそれと重なります。成子内親王のお相手役を、大きなプレッシャーの中で13年間務めた彼女は、「自分より身分が高い、心から敬愛できる方の前に出たら、自分は『無』になる」という感覚を、理解しています。その感覚は、女房文学のみならず、日本の古典を読む上で、大きな役割を果たしているのではないでしょうか。

紫式部が、夫の死後、中宮に女房として出仕したように、彼女もまた夫の死後、学問に打ち込み、働く女性となっていくのでした。子育てや介護や看取(みと)りといった日常の中で、時には外の世界と戦いながらも、人生の支えとして文学に打ち込んできた彼女の姿は、“最後の女房”と言うことができるのかもしれません。
岩佐美代子の眼―古典はこんなにおもしろい / 岩田 ななつ
岩佐美代子の眼―古典はこんなにおもしろい
  • 著者:岩田 ななつ
  • 出版社:笠間書院
  • 装丁:単行本(281ページ)
  • ISBN-10:4305704978
  • ISBN-13:978-4305704979
内容紹介:
国文学者、岩佐美代子のインタビュー。四歳より十三年間昭和天皇第一皇女照宮成子内親王のお相手を勤めた氏の文学研究の秘密を探る。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2010年4月11日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

  • 週に1度お届けする書評ダイジェスト!
  • 「新しい書評のあり方」を探すALL REVIEWSのファンクラブ
関連記事
酒井 順子の書評/解説/選評
ページトップへ