書評

『無縁社会』(文藝春秋)

  • 2017/12/04
無縁社会  / NHKスペシャル取材班
無縁社会
  • 著者:NHKスペシャル取材班
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:文庫(346ページ)
  • 発売日:2012-07-10
  • ISBN:4167838052
内容紹介:
身元不明で「行旅死亡人」となった男の意外な人生、家族に引き取りを拒否された遺体の行方、孤独死の現場を整理する「特殊清掃業者」。年間三万二千件にも及ぶ無縁死の周辺を丹念に取材し、血縁、地縁、社縁が崩壊した現代社会へ警鐘を鳴らす。菊池寛賞受賞のNHKスペシャルに「消えた老人たち」など新章を加え、完全文庫化。

細る家族縁、新しい「縁」の模索も

流行語ともなった、無縁社会、そして無縁死(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2010年)。無縁問題を取り上げたNHKスペシャルを見て「他人事(ひとごと)ではない」という不安を募らせた人は多く、もちろん私もその一人です。

本書は、番組を制作したスタッフたちが、映像に映らなかった情報や取材する側の感情も拾いあげてまとめた一冊。まず気付かされるのは、無縁状態で生きる人々は、家族がいない人たちばかりではない、ということです。

実家があったり、結婚経験があって子供がいる人でも無縁状態に陥る人はたくさんいて、そんな人たちに共通するキーワードは「迷惑をかけたくない」というもの。迷惑をかけたくないからと、家族に頼ることなく孤独に生きる人の、何と多いことか。

他人との接触が無くとも、とりあえず生きていくことはできる環境が整っている今、ずっと結婚せずにいた人のみならず、離職や離婚、死別といったきっかけで、人は簡単に無縁状態となるのでした。だからこそ、性別や年代、家族状況にかかわらず、「明日は我が身」と思う人は多いのではないでしょうか。 今や縁は、貴重品となったのです。家族の縁や地縁は、普通に生きていれば自然に手に入るものではなくなり、積極的に努力をしないと、持つことも保つことも難しい世の中になってきたことを痛感させられます。

しかし本書を読んでいると、縁の形が変化しつつあることも、感じるのでした。家族縁、地縁、社縁といった旧来型の縁ばかりではなく、ネットでつながる縁、NPOやサークル活動の中でできる縁など、新しい縁を模索する人が、増えているのです。

新しい型の縁は、今後もっと重要視されることでしょう。旧来型の縁の中で死ぬことができない人たちが、今は「不幸」「孤独」「悲惨」とされるわけですが、そろそろ視点とシステムの転換が必要なのではないか。家族にはうっとうしがられる「迷惑」も、他人であれば受けとめてくれる場合も、あるのですから。
無縁社会  / NHKスペシャル取材班
無縁社会
  • 著者:NHKスペシャル取材班
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:文庫(346ページ)
  • 発売日:2012-07-10
  • ISBN:4167838052
内容紹介:
身元不明で「行旅死亡人」となった男の意外な人生、家族に引き取りを拒否された遺体の行方、孤独死の現場を整理する「特殊清掃業者」。年間三万二千件にも及ぶ無縁死の周辺を丹念に取材し、血縁、地縁、社縁が崩壊した現代社会へ警鐘を鳴らす。菊池寛賞受賞のNHKスペシャルに「消えた老人たち」など新章を加え、完全文庫化。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2010年12月12日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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