書評

『一〇〇年前の女の子』(講談社)

  • 2017/11/18
一〇〇年前の女の子 / 船曳 由美
一〇〇年前の女の子
  • 著者:船曳 由美
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(290ページ)
  • 発売日:2010-06-15
  • ISBN-10:4062162334
  • ISBN-13:978-4062162333
内容紹介:
正月にはお正月様をお迎えし、十五夜には満月に拍手を打つ。神を畏れ仏を敬う心にみちていた時代の、豊かな四季の暮らし。明治・大正・昭和を、実母を知らずに、けなげに生きた少女の成長物語。

当時の風俗と人々の気持ち伝える

「お母さんも、かつて少女だった」という事実に、娘は大人になってから気付くものです。母親はずっと昔から「お母さん」であったと子供時代は思っていましたが、そんな母親にも少女時代や思春期があったということを、娘は次第に理解していくのです。

本書の主人公は、昨年百歳を迎えた寺崎テイさん。栃木県のとある村に生まれたテイちゃんという女の子が、どのように成長し、大人になっていったかを書いた著者は、テイさんの娘さん。長く編集者として活躍した著者は、テイさんの人生を詳細に調べ、テイさんの気持ちになってこの本を書くことによって、母親を一人の人間として理解しようとしました。

テイさんは、有名人ではありませんし、激動の人生を送ったわけでもありません。しかし読むうちに引き込まれ、思わず小さなテイちゃんにエールを送りたくなるのは、彼女が一〇〇年前の、普通の女の子であったからなのでしょう。汽車が通る度にかまたきの小父(おじ)さんが子供たちにキャラメルを投げてくれた時の、嬉(うれ)しさ。懸命に勉強して、女学校を受験した時の、緊張。テイちゃんの感情は、いつの間にか自分のものになっています。

一〇〇年前の女の子の暮らしは、今とは全く違うものです。季節ごとに様々な行事があり、お祖母(ばあ)さんがその指揮を執る。村の中には今で言うところの格差はあるけれど、そのことを感じさせないような気遣いも、お祖母さんが孫たちに教えていく。テレビはないけれど、富山の薬売りやら、越後の寒紅売りといった外からやってくる人たちが、外の情報はもたらしてくれる……。

一〇〇年前の生活風俗と、人々の気持ちとを正確に伝える本書は、娘から母に対する愛の書でもあります。「お母さんがお母さんでなかった頃」のお話は、娘にとって眩(まぶ)しく、哀(かな)しく、そして誇らしい。母と娘の間に存在する幸せな紐帯(ちゅうたい)が完成させたこの本は、読者の脳裏に、母との記憶を喚起させるのです。
一〇〇年前の女の子 / 船曳 由美
一〇〇年前の女の子
  • 著者:船曳 由美
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(290ページ)
  • 発売日:2010-06-15
  • ISBN-10:4062162334
  • ISBN-13:978-4062162333
内容紹介:
正月にはお正月様をお迎えし、十五夜には満月に拍手を打つ。神を畏れ仏を敬う心にみちていた時代の、豊かな四季の暮らし。明治・大正・昭和を、実母を知らずに、けなげに生きた少女の成長物語。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2010年9月5日

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