書評
『100回泣くこと』(小学館)
実家の犬、ブックが死にそうだと連絡を受けた時、彼女は「バイクで帰ってあげなよ」と言った。ブックがエンジン音が大好きだと知っていたからだ。僕はバイクを修理しながら、彼女にプロポーズする。やがてブックは回復、僕と彼女の幸せな日々も続くはずだった……。
愛するものを永遠に失うという、普遍的なテーマを描いた作品。05年刊行の単行本も10万部を超すロングセラーに。その際のメーン読者は若い女性だった。それが昨年11月(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2008年)に文庫化してからは幅広い層、特にビジネスマンたちに読まれている。
その理由のひとつが、オビ。6月に行った「雨の日に読みたい本」フェアのラインアップに加えた際、人気歌手グループ、ゴスペラーズの北山陽一さんの「うっかり新幹線で読んで号泣しました。透明な世界をあなたにも。」というコメントを載せた。すると「各店舗で品切れになる勢いに。さらに販売に力を入れたところ、ターミナル駅構内の書店での売り上げが驚くほど伸びました」とマーケティング局の広幡文子さん。どうやら移動中のビジネスマンたちが“新幹線”という文字に反応している様子。一目で切ない内容だと分かるコメントやタイトルも、短い時間で本を選ぶ客の目に留まりやすい。
ただし著者は悲しい出来事を扇情的に綴(つづ)ったりしない。「泣かせようという意図はまったくありません。そうした出来事の後に、人は何をどう感じ、どんな言葉を放つのか、それを真剣に考えて書かれた作品」と、担当編集者の石川和男さん。だからこそ、心が震えるような体験を味わえる。読後いつまでも、胸に残るものがあるのだ。
愛するものを永遠に失うという、普遍的なテーマを描いた作品。05年刊行の単行本も10万部を超すロングセラーに。その際のメーン読者は若い女性だった。それが昨年11月(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2008年)に文庫化してからは幅広い層、特にビジネスマンたちに読まれている。
その理由のひとつが、オビ。6月に行った「雨の日に読みたい本」フェアのラインアップに加えた際、人気歌手グループ、ゴスペラーズの北山陽一さんの「うっかり新幹線で読んで号泣しました。透明な世界をあなたにも。」というコメントを載せた。すると「各店舗で品切れになる勢いに。さらに販売に力を入れたところ、ターミナル駅構内の書店での売り上げが驚くほど伸びました」とマーケティング局の広幡文子さん。どうやら移動中のビジネスマンたちが“新幹線”という文字に反応している様子。一目で切ない内容だと分かるコメントやタイトルも、短い時間で本を選ぶ客の目に留まりやすい。
ただし著者は悲しい出来事を扇情的に綴(つづ)ったりしない。「泣かせようという意図はまったくありません。そうした出来事の後に、人は何をどう感じ、どんな言葉を放つのか、それを真剣に考えて書かれた作品」と、担当編集者の石川和男さん。だからこそ、心が震えるような体験を味わえる。読後いつまでも、胸に残るものがあるのだ。
朝日新聞 2008年11月30日
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