書評

『督促OL 修行日記』(文藝春秋)

  • 2017/12/07
督促OL 修行日記 (文春文庫) / 榎本 まみ
督促OL 修行日記 (文春文庫)
  • 著者:榎本 まみ
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:文庫(269ページ)
  • 発売日:2015-03-10
  • ISBN:4167903172

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過酷な職場のサバイバル術

この世には、誰にも感謝されない仕事がたくさんある。本書の著者は、感謝どころか日常的に罵声を浴びせられるコールセンターで働くOL。

コールセンターもいろいろだが、著者が働くのはカード会社の督促を行う部署である。元々人間関係がうまくないと自認する著者だが、海千山千の多重債務者らとの激烈なやりとりで傷つきながら、債権回収の仕事で成長する。仕事は過酷でも、語り口はユーモアに溢(あふ)れている。

本書に描かれたコールセンターは、まるで現代社会の最前線のようだ。「多重債務者」「クレーマー」「感情労働」……そんな現代版「あゝ野麦峠」として本書は読まれているのだろう。他人の職場の過酷さを、「うちの会社はまだまし」とやじ馬的に読むのは楽しい。だが、本書はそこだけに留(とど)まらない。

著者は過酷な職場に立ち向かう武器を見つけ、一人前に成長していく。そんなサバイバルの姿勢、過酷な仕事を楽しむ術といった部分も読みどころだ。

著者が身につける武器とは交渉術。電話での債権回収では、どう言葉を操るかが鍵を握る。

著者が身につけたテクニックのひとつが、相手に怒られる前に謝るというもの。支払いの催促の前に、「朝早い時間にお電話をして申し訳ございません」とひとこと付けることで、相手は怒りにくくなるという。また、厳しい口調で催促の文句をたたみかけても、電話を切る間際に優しい言葉を加えることで、回収率はアップするという。

アイデアや工夫で過酷な仕事を楽しみ、成果も出す。過酷な労働環境で生きる人にとって、この手法はヒントになるだろう。また、ここに挙げたのは借金の督促のためのシビアな技術でもあるが、日常生活で恋人などを操るためにも悪用、いや応用できそうだ。お試しあれ。
督促OL 修行日記 (文春文庫) / 榎本 まみ
督促OL 修行日記 (文春文庫)
  • 著者:榎本 まみ
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:文庫(269ページ)
  • 発売日:2015-03-10
  • ISBN:4167903172

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2012年11月11日

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