書評

『塔の中の女』(講談社)

  • 2018/04/25
塔の中の女 / 間宮 緑
塔の中の女
  • 著者:間宮 緑
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(282ページ)
  • 発売日:2011-09-21
  • ISBN:4062172054
内容紹介:
荒れ地の図書館でエレクトラと再会したオレステスは、城の中心部へ、塔の頂へと近づいていく。僕は永久に少年のまま年を重ねてゆくはずだった-。新鋭が圧倒的なスケールで描く、鮮烈な四五〇枚。

暴れ馬のような奔放な想像力 ★★★★☆ 読みごたえたっぷり、お薦め

新人作家である。一読、著者の奔放な想像力には魅力がある、と感じた。放っておくとどこまでも跳ね続ける暴れ馬のような想像力を、この作家は飼っている(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2011年10月)。

登場人物の名は、エレクトラとオレステス。ギリシャ古典悲劇の傑作、アイスキュロスの『オレステイア』を踏まえている。このあたり勇気を感じる試みだ。

いちおうの主人公は、オレステス。ロードムービー風に各所を移動し、そこで珍妙な出来事や生物に出会う。最後の最後、表題の「塔の中の女」との出会いもある。彼女は本当に母親なのか? もしそうなら、オレステスとエレクトラ、つまり兄と妹の手で殺されてしまうのか? あとは読んでのお楽しみ。

全面的に小説の出来に拍手を送るわけではない。理解不能と思われるところも、ないではない。

だが、このくらいの冒険をしなければ、小説を書く意味なんてないんじゃないだろうか? 小説は冒険者の登場をいつも待っている。確実に言えるのは、この小説に備わっているエネルギーは尋常ではない、ということだ。その一点だけでも、私は間宮緑という作家の才能に一票を投ずる。
塔の中の女 / 間宮 緑
塔の中の女
  • 著者:間宮 緑
  • 出版社:講談社
  • 装丁:単行本(282ページ)
  • 発売日:2011-09-21
  • ISBN:4062172054
内容紹介:
荒れ地の図書館でエレクトラと再会したオレステスは、城の中心部へ、塔の頂へと近づいていく。僕は永久に少年のまま年を重ねてゆくはずだった-。新鋭が圧倒的なスケールで描く、鮮烈な四五〇枚。

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初出メディア

日本経済新聞

日本経済新聞 2011年10月14日

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