書評

『ラーゲリ(強制収容所)註解事典』(恵雅堂出版)

  • 2017/07/01
ラーゲリ註解事典 / ジャック ロッシ
ラーゲリ註解事典
  • 著者:ジャック ロッシ
  • 出版社:恵雅堂出版
  • 装丁:単行本(281ページ)
  • ISBN:4874300235
内容紹介:
ソ連極北の強制収容所・監獄生活24年、現代のオデュッセイアが遺すソ連70年の実相●「監獄に入ったことのない者は実はその国を知りはしない」—ロシアの文豪トルストイの名言である。フランス人ジャック・ロッシはこの名言をその身に体現して24年のソビエト獄を通過し、大著『ラーゲリ註解事典』を後世… もっと読む
ソ連極北の強制収容所・監獄生活24年、現代のオデュッセイアが遺すソ連70年の実相●「監獄に入ったことのない者は実はその国を知りはしない」—ロシアの文豪トルストイの名言である。フランス人ジャック・ロッシはこの名言をその身に体現して24年のソビエト獄を通過し、大著『ラーゲリ註解事典』を後世に遺した。本書は著者了解のもとにこれをテーマ別の日本語「事典」として再編集したものである。語本来の意味でユニークなこの事典は、現代ロシア生活についての根源的知識を提供するもので、おのずから「ロシア政治・社会・民俗事典」ともなっている。しかも見出し語が互いに絡み合うクロス・リファレンスが施してあり、一事が万事に連関するソビエト全体主義が示され精緻をきわめる。(監修者)

事典の形をした記録文学

ジャック・ロッシはコミンテルンに勤務中の一九三七年に逮捕されて以来二四年間、ソ連の監獄とラーゲリ(強制収容所)を遍歴。自身の体験をベースに多数の文献を駆使してラーゲリ体制、いや全体主義体制の全体像と細部を描き切ったのが、『ラーゲリ註解事典』である。途轍もない恐怖と悲劇を伝えながら全編に漂う笑い。これこそが本書を一層面白くし、著者を生き延びさせた源泉のような気がする。

たとえば、反革命的アネグドート(小咄)をしゃべった罪でぶち込まれた「アネグドートによる受刑者」について。

「こんなアネグドートを知っているか?」としゃれの好きな者が話し始めようとすると、それをさえぎっていう。「お前は白海運河は誰によってつくられたか知っているか?」「いや、知らん」「アネグドートをしゃべった奴らさ!」

「白海運河」について。白海とバルチック海を繋ぐ長さ二三〇キロの運河。一九三一年から一九三三年までのわずか二年間で約二八万もの囚人の強制労働で建設され、その間約一〇万人の囚人が落命した。運河はスターリンの決めた通り二〇カ月で完成。

「可能になったのは、オゲペウ(国家政治保安部)が計画できめられていたより著しく浅く掘らせたからに他ならない。そのため運河はほとんど役に立たなかった……ごまかしと爆薬がなかったら白海運河は出来なかっただろう、と言われるのはそのためだ」〔内村剛介監修〕

米原万里全書評1995‐2006。絶筆となった壮絶な闘病記(「私の読書日記」週刊文春)を収録した最初で最後の書評集。

【この書評が収録されている書籍】
打ちのめされるようなすごい本  / 米原 万里
打ちのめされるようなすごい本
  • 著者:米原 万里
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:文庫(583ページ)
  • 発売日:2009-05-08
  • ISBN:4167671042
内容紹介:
「ああ、私が10人いれば、すべての療法を試してみるのに」。2006年に逝った著者が最期の力をふり絞って執筆した壮絶ながん闘病気を収録する「私の読書日記」(「週刊文春」連載)と、1995年から2005年まで10年間の全書評。ロシア語会議通訳・エッセイスト・作家として活躍した著者の、最初で最後の書評集。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

ラーゲリ註解事典 / ジャック ロッシ
ラーゲリ註解事典
  • 著者:ジャック ロッシ
  • 出版社:恵雅堂出版
  • 装丁:単行本(281ページ)
  • ISBN:4874300235
内容紹介:
ソ連極北の強制収容所・監獄生活24年、現代のオデュッセイアが遺すソ連70年の実相●「監獄に入ったことのない者は実はその国を知りはしない」—ロシアの文豪トルストイの名言である。フランス人ジャック・ロッシはこの名言をその身に体現して24年のソビエト獄を通過し、大著『ラーゲリ註解事典』を後世… もっと読む
ソ連極北の強制収容所・監獄生活24年、現代のオデュッセイアが遺すソ連70年の実相●「監獄に入ったことのない者は実はその国を知りはしない」—ロシアの文豪トルストイの名言である。フランス人ジャック・ロッシはこの名言をその身に体現して24年のソビエト獄を通過し、大著『ラーゲリ註解事典』を後世に遺した。本書は著者了解のもとにこれをテーマ別の日本語「事典」として再編集したものである。語本来の意味でユニークなこの事典は、現代ロシア生活についての根源的知識を提供するもので、おのずから「ロシア政治・社会・民俗事典」ともなっている。しかも見出し語が互いに絡み合うクロス・リファレンスが施してあり、一事が万事に連関するソビエト全体主義が示され精緻をきわめる。(監修者)

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初出メディア

東京新聞

東京新聞 2002年7月14日

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