書評

『ウルトラセブンの帰還』(双葉社)

  • 2018/09/03
ウルトラセブンの帰還 / 白石 雅彦
ウルトラセブンの帰還
  • 著者:白石 雅彦
  • 出版社:双葉社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(432ページ)
  • 発売日:2017-12-20
  • ISBN:4575313262
内容紹介:
成功を収めた「ウルトラマン」から半年を経た1967年10月1日、待望の「ウルトラセブン」がテレビに姿を現した。子供達は大喝采で迎え、金城哲夫をはじめとする若きスタッフも自信満々であった。しかし一人の人物が、作品の先行きに危惧を抱いていた…。前作2冊でファンの度肝を抜いた著者が、ついにシリーズ最高の人気作に挑むドキュメンタリー第3弾。豊富な一次資料を駆使し、同時代の視点で、制作過程を再構築する。かくてウルトラセブンは朝焼けの空へ飛び去った。

試行錯誤繰り返し、時代刻む

学生運動やベトナム反戦運動が高揚しつつあった1967年10月から68年9月にかけて、毎週日曜日に49回放送された子供向けのテレビ番組があった。「ウルトラセブン」である。

いまなお熱狂的なファンが多く、語り尽くされてきた感のあるこの番組を、著者は監修者の円谷英二の日記、新たに発見された脚本家のノート、そして当時のスタッフへのインタビューなどを通して、一つひとつ丁寧に検証してゆく。その結果、私たちがテレビで目にすることができたのはあくまでも完成作品のみであり、そこに至るまでには想像を絶するほどの試行錯誤が繰り返されたこと、脚本が完成しながら映像化されなかった幻の回も少なくなかったことが明らかになる。

最も多く脚本を手掛けたのはともに沖縄出身の金城哲夫と上原正三である。当時はまだ返還前だったが、著者はこの二人が書いた作品に沖縄からのまなざしを感じとる。例えば上原が担当した「700キロを突っ走れ!」は爆発物を積んだ米軍の車が島内を走り回る恐怖の記憶が原点になっているし、「あなたはだぁれ?」は沖縄にはない都会の団地の不気味さを描いている。上原ほど問題意識を前面に出さない金城にも、「ノンマルトの使者」のように沖縄人のアイデンティティーがにじみ出た作品がある。沖縄に固有の他界観が、この作品に反映しているというのである。

金城や上原のほかにも、実相寺昭雄や佐々木守ら多彩な監督や脚本家が集まり、それぞれの構想をぶつけ合っていた。例えば戦後民主主義者を公言する佐々木守が脚本を担当した「勇気ある戦い」には、ウルトラ警備隊とロボットが皇居前で闘う場面があった。この場面は完成稿で削られたが、新左翼の皇居突入があり得た時代との連動性が感じられる。

驚くべきは、これほどの高度な内容をもつ番組が子供向けに作られたことである。前作「ウルトラマン」ほどの人気は望むべくもなく、当初30%を超えていた視聴率はどんどん下がり、ついには10%台にまで落ち込んでしまう。円谷英二の日記にはそれを嘆くぼやきの言葉が目立つようになる。

だが「ウルトラセブン」は、繰り返し放送されることで、しだいに名声を獲得してゆく。初めて見たときに子供だった世代が、再放送でようやく内容を理解できるようになるからだ。かく言う私もその一人である。本書は、テレビ番組もまた時代の刻印を帯びていることをまざまざと示したという点で、画期的な意義をもつ。戦後思想史のなかにこの番組を位置づける試みを始めなくてはなるまい。
ウルトラセブンの帰還 / 白石 雅彦
ウルトラセブンの帰還
  • 著者:白石 雅彦
  • 出版社:双葉社
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(432ページ)
  • 発売日:2017-12-20
  • ISBN:4575313262
内容紹介:
成功を収めた「ウルトラマン」から半年を経た1967年10月1日、待望の「ウルトラセブン」がテレビに姿を現した。子供達は大喝采で迎え、金城哲夫をはじめとする若きスタッフも自信満々であった。しかし一人の人物が、作品の先行きに危惧を抱いていた…。前作2冊でファンの度肝を抜いた著者が、ついにシリーズ最高の人気作に挑むドキュメンタリー第3弾。豊富な一次資料を駆使し、同時代の視点で、制作過程を再構築する。かくてウルトラセブンは朝焼けの空へ飛び去った。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2018年2月25日

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