書評

『永続敗戦論――戦後日本の核心』(太田出版)

  • 2017/08/17
永続敗戦論――戦後日本の核心  / 白井 聡
永続敗戦論――戦後日本の核心
  • 著者:白井 聡
  • 出版社:太田出版
  • 装丁:単行本(224ページ)
  • 発売日:2013-03-08
  • ISBN:4778313593
内容紹介:
「永続敗戦」それは戦後日本のレジームの核心的本質であり、「敗戦の否認」を意味する。国内およびアジアに対しては敗北を否認することによって「神州不滅」の神話を維持しながら、自らを容認し支えてくれる米国に対しては盲従を続ける。敗戦を否認するがゆえに敗北が際限なく続く-それが「永続敗戦」という概念の指し示す構造である。今日、この構造は明らかな破綻に瀕している。1945年以来、われわれはずっと「敗戦」状態にある。「侮辱のなかに生きる」ことを拒絶せよ。

対米従属を続けたい人だらけ

書名以上に、本書の内容は刺激的である。読んだあと、顔面に強烈なパンチを見舞われ、あっけなくマットに仰向けに倒れこむ心境になった。こんな読後感は初めてだ。

本書にいう「永続敗戦」とは、「敗戦を否認しているがゆえに、際限のない対米従属を続けなければならず、深い対米従属を続けている限り、敗戦を否認し続けることができる」状況を指す。本書の目的は「永続敗戦」としての「戦後」継続を「認識の上で終わらせること」にある。

現実には、「永続敗戦」の構造が政官財学、そしてメディアを中心に執拗(しつよう)に維持されている。官邸に陣取る外交アドバイザーが米日関係を「騎士と馬」に擬(なぞら)えていたり、3・11による原発事故に際して日本気象学会のトップがその主体性において屍(しかばね)と化した発言をしたり、財界のトップにいたっては原発の建屋爆発後に「千年に一度の津波に耐えているのは素晴らしい」と言い放っているのは、滑稽でさえあると本書はいう。

著者は「平和と繁栄の時代」が終わったのだから、それを与件としてしか成立しえない「戦後」も終わったと確信する。9・11によって米国がカール・シュミットのいう「例外状態」に突入したように、小泉総理大臣が北朝鮮を電撃訪問したことで日本も同じ状態に入ったと主張するのだ。「例外状態」とは戦争状態をいうのだから。

本書は経済学にも重い課題を突きつけている。1956年に経済白書が「もはや戦後ではない」と宣言したが、この国の「戦後」は続いていたのである。この誤認にバブル崩壊後、政府の目的と化した「成長戦略」が失敗に終わった理由があるといえよう。「永続敗戦」を甘受した結果「世界によって自分が変えられてしまう」ことを断固拒否する著者の姿勢を、評者は断固支持する。そうしないと、TPP参加や沖縄問題などどれも失敗に終わるだろう。
永続敗戦論――戦後日本の核心  / 白井 聡
永続敗戦論――戦後日本の核心
  • 著者:白井 聡
  • 出版社:太田出版
  • 装丁:単行本(224ページ)
  • 発売日:2013-03-08
  • ISBN:4778313593
内容紹介:
「永続敗戦」それは戦後日本のレジームの核心的本質であり、「敗戦の否認」を意味する。国内およびアジアに対しては敗北を否認することによって「神州不滅」の神話を維持しながら、自らを容認し支えてくれる米国に対しては盲従を続ける。敗戦を否認するがゆえに敗北が際限なく続く-それが「永続敗戦」という概念の指し示す構造である。今日、この構造は明らかな破綻に瀕している。1945年以来、われわれはずっと「敗戦」状態にある。「侮辱のなかに生きる」ことを拒絶せよ。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2013年6月16日

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