書評

『人類5万年 文明の興亡: なせ西洋が世界を支配しているのか』(筑摩書房)

  • 2018/09/04
人類5万年 文明の興亡: なせ西洋が世界を支配しているのか / イアン モリス
人類5万年 文明の興亡: なせ西洋が世界を支配しているのか
  • 著者:イアン モリス
  • 翻訳:北川 知子
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:単行本(404ページ)
  • 発売日:2014-03-19
  • ISBN:4480861270
内容紹介:
文明はなぜ衰退するか。圧倒的スケールで東西の歴史を俯瞰したとき見えてきたものとは──。スタンフォードの歴史学者が西洋終焉の未来図を明晰な論理で描きだす。

決め手は、時々の地理的条件

英国の歴史学者ホブズボームは20世紀を「極端な世紀」と名付け、「8千年の歴史の終わり」と位置付けたが、本書を読むと前世紀は「狂気の世紀」だと思えるし、人類に100年後の未来はあるのかと不安が募った。

本書は氷河期が終わった紀元前1万4千年から現在に至るまで、エネルギー獲得量や都市化度合いが示す「社会発展の鼓動」を基に著者が独自に指数化した「社会発展指数」を駆使しながら、西洋と東洋の興隆と衰退を解明する。

従来、西洋の優位性について、「長期固定」理論と「短期偶発」理論が対立してきた。前者は西洋人は「他民族よりも文化的に優れている」と考え、後者は西洋が「アヘン戦争間際の1800年代に入ってはじめて一時的に東洋をしのいでいるのであって、それすらほとんど偶然の出来事だった」と主張する。

著者は両説とも誤りだと断定する。「どこへ行こうと何をしようと、人間は、大きな集団として考えれば、みな同じ」。6世紀半ばから18世紀後半にかけて東洋が西洋をしのぎ、その後、西洋が東洋を圧倒したのは、いずれも当時の政治上、経済上の地理的条件の違いが決め手だった。

産業革命が「何もかも」の時代、すなわち「貪欲(どんよく)に夢見る以上のものが得られる物質的豊かさの時代」を到来させた。21世紀には、東洋が西洋を再逆転するとみられるが、本当の問いは「私たちはどこへ向かうのか」だという。

氷河期後から2000年までに西洋の社会発展指数は、900点上昇している。20世紀の100年だけで736点増えたこと自体驚異的だが、21世紀末には東洋の点数は、4千点以上上昇すると著者は予測する。「私たちは、歴史における最大の断絶点」に近づきつつある。「新しい存在に進化する」のか、「夜来たる」なのかは、「時代が必要とする思想」を手に入れられるかどうかにかかっている。
人類5万年 文明の興亡: なせ西洋が世界を支配しているのか / イアン モリス
人類5万年 文明の興亡: なせ西洋が世界を支配しているのか
  • 著者:イアン モリス
  • 翻訳:北川 知子
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:単行本(404ページ)
  • 発売日:2014-03-19
  • ISBN:4480861270
内容紹介:
文明はなぜ衰退するか。圧倒的スケールで東西の歴史を俯瞰したとき見えてきたものとは──。スタンフォードの歴史学者が西洋終焉の未来図を明晰な論理で描きだす。

ALL REVIEWS経由で書籍を購入いただきますと、書評家に書籍購入価格の0.7~5.6%が還元されます。

初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2014年06月08日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

関連記事
水野 和夫の書評/解説/選評
ページトップへ