書評

『1971年』(エヌティティ出版)

  • 2020/01/04
1971年 / 土谷 英夫
1971年
  • 著者:土谷 英夫
  • 出版社:エヌティティ出版
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(244ページ)
  • 発売日:2014-01-17
  • ISBN-10:4757123310
  • ISBN-13:978-4757123311
内容紹介:
グローバル社会はここから始まった! ドルと金の交換停止が発表された(ニクソン・ショック)年、固定相場制から変動相場制への転換を模索しはじめて世界経済が「市場化」へと動き出した年、ネット社会の起点となるマイクロプロセッサが生まれた年、はじめてEメールアドレスに「@」が使われた年、1971年。 同年、駆け出し記者となった著者は、グローバル経済の転換点に立つ。

ドルが動き、すべてが動いた

つくづく「グローバル化には明確な定義はない」(『グローバル・トランスフォーメーションズ』D・ヘルド他編)と思う。定義がないから必然でもあるし、そうでもない。本書は必然の立場にたち、後者の代表が『グローバリゼーション・パラドクス』(ダニ・ロドリック)だ。

どちらを支持するにせよ、いま進行中の「ネット社会」や「グローバル化」の起源が1971年にあるという本書の主張に異論は出ないであろう。71年8月にニクソン米大統領(当時)は「不動のドルに各国通貨が決まった比率で釘付けされて」いたブレトンウッズ体制を崩壊させ、その1カ月前には、中国訪問計画を公表して世界を驚かせていた。この二つの「ショック」はベトナム戦争の苦境から脱するための切り札だった。

太陽(ドル)が動いたことで、シカゴマーカンタイル取引所のレオ・メラメド会長が通貨先物取引を始めた。少年時代に経験したナチスからの「逃避行」が彼に通貨先物を思いつかせたのだった。

「情報と市場は切っても切れない関係にある」から「市場化」が加速・深化するには「情報化」の技術革新が必要となる。71年にインテルがマイクロ・プロセッシング・ユニットの開発に成功しなければ、そしてレイ・トムリンソンが「@」を入れたメールで異なるPC間のネットワーク化に成功しなければ今の世界経済システムはなかった。

情報技術のその後の発展はメラメドの「先物市場は場立ち取引でのみ成功する」との予想を覆し、ニクソンの「投機家を封じ込める」との思惑も吹き飛ばした。人間の制御が及ばない領域に入った「市場化」(「情報化」)に身を委ねるのか、引きとどめるのか。その違いが克服できない以上、グローバル化の定義は定まらないし、先住者や民族文化を蹂躙(じゅうりん)するという「原罪」を抱えたまま、グローバル化は良くも悪くも進んでいく。
1971年 / 土谷 英夫
1971年
  • 著者:土谷 英夫
  • 出版社:エヌティティ出版
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(244ページ)
  • 発売日:2014-01-17
  • ISBN-10:4757123310
  • ISBN-13:978-4757123311
内容紹介:
グローバル社会はここから始まった! ドルと金の交換停止が発表された(ニクソン・ショック)年、固定相場制から変動相場制への転換を模索しはじめて世界経済が「市場化」へと動き出した年、ネット社会の起点となるマイクロプロセッサが生まれた年、はじめてEメールアドレスに「@」が使われた年、1971年。 同年、駆け出し記者となった著者は、グローバル経済の転換点に立つ。

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初出メディア

朝日新聞

朝日新聞 2014年03月30日

朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました。

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