書評

『洋菓子はじめて物語』(平凡社)

  • 2021/10/20
洋菓子はじめて物語 / 吉田 菊次郎
洋菓子はじめて物語
  • 著者:吉田 菊次郎
  • 出版社:平凡社
  • 装丁:新書(222ページ)
  • 発売日:2001-12-01
  • ISBN-10:4582851215
  • ISBN-13:978-4582851212
内容紹介:
ショートケーキの「ショート」の意外な意味とは?ビスケットはなぜもとは「二度焼き」なのか?タルトとトルテは実は同じものだった?豊富なエピソードと文献を駆使した推理をまじえながら、魅惑のスウィーツのはじまりと歴史を当代きっての洋菓子博士が縦横無尽に描き出す。隅々までおいしさいっぱい、蘊蓄たっぷりの世界スウィーツ文化史の物語。

高級洋菓子ブームの秘密

高級洋菓子がブームである。有名職人のいる店は大にぎわいだ。一方で激安ファストフード店も大繁盛なんだから、どういうこと?

高級洋菓子は椅子である、というのが私の仮説だ。昨今、椅子ブームである。それもウェグナーやアアルトなど有名デザイナーや有名建築家のものが人気だ。椅子は小さな建築である。有名建築家に自邸の設計を依頼するのは難しくても、椅子なら手が届く。高級洋菓子ブームもそれと同じで、高級フランス料理店でディナーをというのは無理でも、ケーキやタルトだったらなんとかなる。

というわけで『洋菓子はじめて物語』。著者の吉田菊次郎は東京・渋谷のフランス菓子店、ブールミッシュの店主で、メディアにもよく登場する人。チーズケーキに始まり、プリン、タルト、シュークリームなど、洋菓子の来歴を種類別に語る。「はじめて物語」というように、その菓子がどのように誕生し、日本に伝えられたのかが主題だ。

たとえば、はじめてプリンを作ったのはイギリスの船乗りだった。食材も器具も台所も限られた船内で、あり合わせの材料をナプキンで包んで蒸し焼きにしたのがその起源とか。やがて陸に上がり、溶液のみ固まらせ、カラメルソースをからませて今日のカスタード・プディングになった。

洋菓子の誕生と発展には、外交や政治、科学技術が深くつながっている。チョコレートはヨーロッパ人の中米侵略によってもたらされ、アイスクリームは冷却や冷凍の技術があってこそ可能になった。ムースの流行の背景には、ミッテラン政権の時短政策があったとか。日本人にとって洋菓子は西洋文明のシンボルだった。

各章の冒頭には洋菓子をめぐるお嬢さんたちの会話が置かれている。しかし、ドラマ「アンティーク〜西洋骨董洋菓子店」でもそうだったように、いま洋菓子に熱狂するのは女性だけではない。男だってケーキは好きだ。もちろん私だって。
洋菓子はじめて物語 / 吉田 菊次郎
洋菓子はじめて物語
  • 著者:吉田 菊次郎
  • 出版社:平凡社
  • 装丁:新書(222ページ)
  • 発売日:2001-12-01
  • ISBN-10:4582851215
  • ISBN-13:978-4582851212
内容紹介:
ショートケーキの「ショート」の意外な意味とは?ビスケットはなぜもとは「二度焼き」なのか?タルトとトルテは実は同じものだった?豊富なエピソードと文献を駆使した推理をまじえながら、魅惑のスウィーツのはじまりと歴史を当代きっての洋菓子博士が縦横無尽に描き出す。隅々までおいしさいっぱい、蘊蓄たっぷりの世界スウィーツ文化史の物語。

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初出メディア

週刊朝日

週刊朝日 2002年1月18日

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