書評
『デジカメだからできるビジネス写真入門』(岩波書店)
デジカメでプロ並みに撮る
ライターである私の生活は、パソコンによってすっかり変わった。取材の下調べも原稿執筆も、もはやパソコンなしでは成り立たない。同じような変化がデジタルカメラによってもたらされるかもしれない。そう予感させるのが、田中長徳の『デジカメだからできるビジネス写真入門』である。ビジネス写真とは田中の造語で、ビジネスマンが仕事上の必要で撮る写真のこと。プレゼンテーションするための商品写真だったり、出張の記録だったり。従来のフィルム式カメラでは難しかったことも、デジカメなら簡単に、しかもプロ並みに上手に美しく撮れるというのである。
シチュエーション別の撮り方(なんと二十例も!)を解説し、著者自身による作例もある。作例はいずれもカラーなのだが、なるほど「デジカメでここまで撮れるのか」と驚くほど。
ところでこの本、岩波書店が一月十一日に創刊した岩波アクティブ新書の一冊である。椎名誠の『活字のサーカス』(一九八七年)あたりから、岩波新書もいくぶん柔らかくなったね、などといわれてはいたものの、ここまで実用に徹した本はなかった。アクティブ新書は読者対象を会社員や主婦に絞り込み、生活実用書やビジネス書を出していく。第一弾のラインナップには『知らないと損!女性のためのマネープラン』(武田浩美著)や『ブロードバンドを使いこなす』(石田晴久著)なんていう、およそ岩波書店のイメージから遠い書名の本が並んでいる。
とはいえ竹原和彦の『こうして治すアトピー』は治療ガイドであると同時にアトピービジネス糾弾書でもあるし、奥村宏の『倒産はこわくない』は著者がこれまで主張してきた法人資本主義論の「さわり」みたいな本で、岩波っぽさも残っているのだけど。
せっかく実用・ビジネスラインを作ったのだから、柔らかいのはこちらにまかせて、本家の岩波新書には、ますます反時代的なゴリゴリの教養主義路線でいっていただきたい。
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