書評

『俺たちはどう生きるか』(集英社)

  • 2019/08/17
俺たちはどう生きるか / 大竹 まこと
俺たちはどう生きるか
  • 著者:大竹 まこと
  • 出版社:集英社
  • 装丁:新書(224ページ)
  • 発売日:2019-07-17
  • ISBN-10:4087210847
  • ISBN-13:978-4087210842
内容紹介:
歯に衣着せぬ語りで人気の芸人も、もう古希・70歳。「需要がなくなれば芸人なんて終わり」とわかっちゃいるのに、「あのジジイ、やるな」とまだ世間から言われたい……。「若者に教訓めいたこ… もっと読む
歯に衣着せぬ語りで人気の芸人も、もう古希・70歳。
「需要がなくなれば芸人なんて終わり」とわかっちゃいるのに、「あのジジイ、やるな」とまだ世間から言われたい……。
「若者に教訓めいたことを何か言ってやりたい」と思うけれど、「そんな立派な人生を送ってきたか?!」と躊躇する……。
「歳をとれば、悩みなんてなくなると思っていたのに」とボヤきつつも、自分の仕事、老い、人間関係、そして社会について、真摯に赤裸々に綴った一冊。直筆の生原稿、収録!

■本文より一部抜粋

私は、マネージャーのI君に言われて、ツイッターなるものを始めてみたが、どうもしっくりこない。
ほかのタレントや作家は、公演のお知らせなどに利用しているらしいが、なぜか、私はダメなのだ。
ある日、突然、炎上する。私には、その意味さえわからない。ただ、ツイッターの文言にあることは、一面、真実だとも思う。
「老害は死ネ」とわざわざ言われなくても、もう仕事もさほど多くないし、コメディアンとは、その時代と添い寝した男(女)たちのことだ。
持論である。時代から少しでもずれたら勝手に死んでいくだけである。
そろそろ、そんな局面が来た。いつまでもウジウジとテレビなどに出ていたくはない。
しかし、「また、あのジジィがやりやがったな、ちくしょう!」とも言われてみたい。
心底、庶民の側に立っていたいとの気持ちでやってきたが、全世界を敵にまわしたい欲望にもかられる今日この頃である (本文より)

■目次
第一章 昔みたいに
第二章 私たちがそれを選んだ
第三章 傍観者でいるのか
第四章 弱者は弱者のまま終わらない
第五章 ダメな大人の言葉などに耳を貸さぬが良い

■著者プロフィール
大竹 まこと(おおたけ まこと)
1949年東京都生まれ。東京大学教育学部附属中学校・高等学校卒業。
1979年、友人だった斉木しげる、きたろうとともに『シティボーイズ』結成。不条理コントで東京のお笑いニューウェーブを牽引。
現在、ラジオ『大竹まこと ゴールデンラジオ!』、テレビ『ビートたけしのTVタックル』他に出演。
著書に『結論、思い出だけを抱いて死ぬのだ』等。


他者を問い詰めながら返す刀で自問自答する

著者がパーソナリティーを務めるラジオに2年近く出演している。隔週で10分弱、主に時事問題について話しに出向く。スタジオに入り、喋り、そのまま出るので、スタジオ以外の場でじっくり話したことはない。

あちらがグッと身を乗り出す瞬間がある。身を乗り出して持論を述べるのではない。身を乗り出して話を聞こうとするのだ。仕事柄、様々な年長者に会うが、年が半分くらいの若造にそういう態度で接してくれる人は少ない。傾聴し、受け止めてから、自分の考えを切り出してくる。

俺にはわからないことがある、という態度が自身の起点にある。それが、野心としてうごめいている。「私はどこにもくみする者ではない」「誰も答えてはくれない。一人なのだから。人は一人なのだから」、こういう断言が顔を出すのに、読み進めていくと、その断言がたちまち溶け、いつまでも迷っている。

世の中がきな臭いままだ。その時に、臭さの原因を手厳しく問い詰めながら、でも、もしかして臭さの原因は自分にもあるのではないかと悩む。それって、視野が広い。こんな世の中はどうなのか、と語った後に、そんなことを言っている自分はどうなのか、と自問自答する。回り道の途中で迷っている自分をわざわざ知らせてくる。

「心底、庶民の側に立っていたいとの気持ちでやってきたが、全世界を敵にまわしたい欲望にもかられる今日この頃である」とある。善意と悪意というのは反対側にあるのではなく、隣で座っているものなのかもしれない。「すまん。若者よ。君たちに伝える言葉をこの年寄りは持っていなかった」。あの大竹まことがまだ答えに迷っているのである。じゃあ、自分は、当然、まだ迷っていいと思える。勇気の与え方がとても優しい一冊だ。
俺たちはどう生きるか / 大竹 まこと
俺たちはどう生きるか
  • 著者:大竹 まこと
  • 出版社:集英社
  • 装丁:新書(224ページ)
  • 発売日:2019-07-17
  • ISBN-10:4087210847
  • ISBN-13:978-4087210842
内容紹介:
歯に衣着せぬ語りで人気の芸人も、もう古希・70歳。「需要がなくなれば芸人なんて終わり」とわかっちゃいるのに、「あのジジイ、やるな」とまだ世間から言われたい……。「若者に教訓めいたこ… もっと読む
歯に衣着せぬ語りで人気の芸人も、もう古希・70歳。
「需要がなくなれば芸人なんて終わり」とわかっちゃいるのに、「あのジジイ、やるな」とまだ世間から言われたい……。
「若者に教訓めいたことを何か言ってやりたい」と思うけれど、「そんな立派な人生を送ってきたか?!」と躊躇する……。
「歳をとれば、悩みなんてなくなると思っていたのに」とボヤきつつも、自分の仕事、老い、人間関係、そして社会について、真摯に赤裸々に綴った一冊。直筆の生原稿、収録!

■本文より一部抜粋

私は、マネージャーのI君に言われて、ツイッターなるものを始めてみたが、どうもしっくりこない。
ほかのタレントや作家は、公演のお知らせなどに利用しているらしいが、なぜか、私はダメなのだ。
ある日、突然、炎上する。私には、その意味さえわからない。ただ、ツイッターの文言にあることは、一面、真実だとも思う。
「老害は死ネ」とわざわざ言われなくても、もう仕事もさほど多くないし、コメディアンとは、その時代と添い寝した男(女)たちのことだ。
持論である。時代から少しでもずれたら勝手に死んでいくだけである。
そろそろ、そんな局面が来た。いつまでもウジウジとテレビなどに出ていたくはない。
しかし、「また、あのジジィがやりやがったな、ちくしょう!」とも言われてみたい。
心底、庶民の側に立っていたいとの気持ちでやってきたが、全世界を敵にまわしたい欲望にもかられる今日この頃である (本文より)

■目次
第一章 昔みたいに
第二章 私たちがそれを選んだ
第三章 傍観者でいるのか
第四章 弱者は弱者のまま終わらない
第五章 ダメな大人の言葉などに耳を貸さぬが良い

■著者プロフィール
大竹 まこと(おおたけ まこと)
1949年東京都生まれ。東京大学教育学部附属中学校・高等学校卒業。
1979年、友人だった斉木しげる、きたろうとともに『シティボーイズ』結成。不条理コントで東京のお笑いニューウェーブを牽引。
現在、ラジオ『大竹まこと ゴールデンラジオ!』、テレビ『ビートたけしのTVタックル』他に出演。
著書に『結論、思い出だけを抱いて死ぬのだ』等。


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初出メディア

サンデー毎日

サンデー毎日 2019年8月11日増大号

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